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第115話 倶楽部

 ミカドはこの頃商売が出来ていない。倶楽部の中だけで商売している訳ではない。  客は厳しく吟味しているつもりだが、あの芸能界ゴロの寺田を相手にしてしまった。  ミカドは高級男娼で売っている。倶楽部のなかでは絶対変な客はいない。  この前は、ミカドが欲を出して外で商売してまずい事になった。寺田もしつこく寄ってきて、自分のモノ、みたいに振る舞う。  寺田は倶楽部の会員ではないので,中には入って来れない。ミカドは商売そっちのけで倶楽部に逃げ込んで来たのだ。 「ふーっ、外はうんざりだわ。 この天下のミカドさんが,寺田みたいなあんな小物に、我が物顔にされるんだから。」  見るとロジャーが来ている。ゆったり着崩したした、スーツのなかで、シャツがはだけて、胸毛がのぞいている。 (いつ見てもイケおじだわ。胸毛が素敵。 あの忌々しいミトっていうガキがいないわねぇ。 久しぶりに上客だわ。昔は抱いてくれたっけ。) 「ロジャー久しぶり。一人?寂しそうね。」 隣に座ってしなだれかかる。 「ミカドか、老けたな。」 「まあ!ひどいわ。昔はあんなに愛してくれたのに。いつもの可愛いお嫁ちゃんは?」  ロジが、フロアを指差した。名都がミトとダンスを踊っている。 「チークダンスでもなさそうね。 ちゃんとしたステップでワルツを踊っている。」 「ミトが名都に教わっているんだよ。 名都は外国暮らしが長くてダンスも慣れた物だ。 正式なステップで踊ってるよ。」 「人は見かけによらないものね。 あんなにゴツいのに。」 藤尾がやって来てロジの隣に座った。 「なんだ、おまえ、ロジャーに粉かけてんのか?」 「あら、いたの?何もしてないわよ。」

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