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第120話 奥
傑が、
「解らない事もそのままでいいと思って来たのですが、何か起こると今まで見ぬふりをして来た事を目の前に突きつけられる。
いい加減に流して来たことが白日の元に曝け出される。
このごろ、特にそんな傾向が顕著になって来たような気がします。
私はよく、ご老人に呼ばれて、奥、に行きますが、その時だけは確かに存在している。自分がいない時、奥、がどうなってるか?なんて考えた事なかった。」
ロジャーは気になっている事を口にした。
「処理、とは何ですか?
藤尾さんは知ってるんですか?」
「処理とは、閏年(うるうどし)の事だよ。
閏年は1日増やす事だが、減らす必要があれば減らす。ロジャー先生がよくご存知の、宇宙的な惑星の暦の修正とかと同じだ。
人間が修正するのでは無いよ。宇宙がやるんだ。」
ミトが
「1日減らすの?無かったことにするの?」
「そう、宇宙では時の進み方が違う事もある。
逆行する事もある。
理論上はアインシュタインの相対性理論が使えるかな?」
「それって何も信じられなくなるって事?」
ロジがミトの肩を抱いて頬にキスしてくれた。
頭を撫でてくれる。
「この手でミトを抱きしめる事は信じられるだろう。」
「うん、だけどそれは一瞬だ。宇宙的には一瞬だ。そう言えば夜の星の瞬きだって、地球で僕が見てるのは、過去のその星の幻かもしれないよね。何光年も離れた星が、ここで見えてる頃には、もう消滅しているかもしれない。
ねえロジ。
有る、って何?無い、のに見えてる。
時間って何?」
「その疑問の答えを知りたくて、尊も友也も、私の学生になったんだよ。
ミトと話すのは面白いなぁ。」
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