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第125話 思い出

「傑、お昼、何にする?」 「ざるそば。」 「傑、お蕎麦好きだねぇ。」 「深大寺に食べに行くか?」 「え、今から?ま、いいか。 今日もお店開けられないんでしょう。 じゃあ行こう。」  思いの外、店のドアの修理は大掛かりなものになった。まだ、工事が終わらない。  電車を乗り継いで深大寺に行った。途中、駅や電車の中で、二人はとても目立っていた。  もの凄くハンサムで背の高い二人、が手を繋いで歩いたり、電車の中で寄り添って見つめあったり、誰が見ても同性愛者のカップルだ。傑も礼於も隠さない。席が空いたら、礼於を大切そうに座らせる。混んできたら、礼於の腰に手を回して、傑が盾になる。姫を守るナイトのようだ。  深大寺には美味い蕎麦屋がたくさんある。 シンプルな、ざる、が一番美味い、と何枚もおかわりして食べた。もう夕方だ。 「バスで阿佐ヶ谷に出て、駅前のおでん屋で一杯飲むんだ。」 礼於が笑って 「傑の情報っていつの?」 「学生時代。そうか、もう12.3年前になるんだな。あの頃のおでん屋の屋台はいないかなぁ。 いても、別の人だね、きっと。」  傑にとって懐かしい場所だった。いつも一緒にいたハジメと離れて、大学では、一人だった。  友達は数人出来たが、自分の性的嗜好を理解してもらおう、とは思わなかった。  女子が告ってくる。傑はピンと来ない。付き合う、というのが考えられなかった。  面倒だ。ハジメのように、目的を持って選んだ大学ではなかった。惰性で入った大学で、いつも違和感を抱いていた。  興味は大学以外の場所にあった。

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