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第127話 処理

 礼於はこの頃、何か忘れているような気がする。大した事ではない、とわかっているのに、それが何か思い出せない。 「え、今日って水曜日?火曜日だと思ってた。 じゃあ、火曜日はどこへいったの?」 「礼於、何を言ってるんだ? 1日無くしたみたいな言い方。昨日は火曜日だったでしょ。その前は月曜日。その前は日曜日。  いつも同じように時は過ぎるよ。」 「うん、数えると合ってるんだけど、なんか足りない。」 「そんな事ないよ。誰もそんな事感じてないよ。 私といると時間を忘れるって事?」 傑が笑っている。  やっとドアの修理が終わって、久しぶりにバーは営業している。  ドアを開けてミカドが入って来た。 「いらっしゃい。」 傑が声をかけた。礼於が、 「今日は一人ですか?寺田さんは? あ、待ち合わせ?」  ミカドは怪訝な顔をして 「何言ってるの?この子。」  傑も変な顔をしている。 「礼於、誰かと間違えてる? 」 「えっ?ミカドさんでしょ。」 「あら、よく覚えてて、くれたわね。 恋敵、だからね。」 「よしてくださいよ。また、礼於に疑われる。 私は浮気はしないんだ。」  礼於は傑の耳元で 「寺田さんのこと、忘れちゃったの?」 「誰?」 「えぇ?傑もそんな事、言ってる。」 どうやら、みんな忘れたふりをしているようだ。 「今日は傑の顔を見に来ただけよ。 これから倶楽部に行くわ。素敵な恋を探しに、ね。景気付けになにか、カクテル作ってよ。」  傑が何か作り始めた。 ジンはタンカレーを使って、ホワイトキュラソーとレモンジュースを入れてシェーカーを振る。 チルドしたカクテルグラスに注いで 「ホワイトレディです。 ミカドさんにピッタリなレディのカクテル。」  傑が凄くカッコいい。ミカドもご満悦で 「今日はゲンがいいわ。素敵な出会いがありそう。礼於ちゃん、傑はとらないわよ。安心して。」 笑っている。

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