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第140話 アオ
アオは親に死に別れてずっと一人だった。優しくしてくれるなら誰にでもついていった。
相手は、主に蛇頭のチンピラだったが、可愛げのあるアオはセックスの相手として大事にされた。
男に媚びる事は生きる事。それでも心から愛し、守ってくれる男は少なかった。
蛇頭は、みんなヒリヒリするような命を削る生き方をしていたから、愛した男はみんな生き急いだ。まるで明日をも知れぬ命を燃やすようにアオを抱いた。
12歳の頃から、性の捌け口として利用されただけだった。
日本に連れてこられてから、いつも好きになるのは大きな人。ガタイのいい男。背が高くてがっしりした身体で包み込んでくれる人。
正に傑だった。ガンスも大きくて男らしく初めは惹かれたが、彼はネコだった。受け、なのだ。
アオも受けだから、物足りない。可愛がられたい。イルスは攻めだが美しすぎる。線が細い。イケメン過ぎるのだ。
傑を一目見て、心が震えた。
(この人に抱かれたい。きっと攻め、だろう。
一度でいいから抱いてほしい。)
傑には、いつもよりそう礼於という恋人がいる。礼於もまた絶世の美男なのだ。
とても勝ち目はない。でも一回だけなら、とアオは考えた。
アオは、ずっと傑に見惚れている。目を離さない。
視線を感じて傑がくすぐったそうにしている。礼於も気付いた。その場にいる人なら誰もが気付いただろう。
「こいつ、何見惚れてんだよ。
マスターがタイプなのか?」
藤尾さんに言われて、悪びれる事もなく
「マスターは大好きなタイプだ。すごく好き。
ねぇ、俺を抱いてみない?一回でいいからさ。」
藤尾さんが鼻白んで
「マスターは最愛の嫁さんがいるんだよ。
ほら、隣にいるだろ。超イケメンが。
な、礼於。」
礼於はドキドキしてしまった。もちろん傑はイケメンだけど、今まで礼於が目立ち過ぎて、傑はこんなにあからさまに口説かれた事は無い。
(油断した。傑を取られちゃう。)
藤尾さんが
「ガキが、何大人口説いてんだよ。」
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