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第143話 アオ④

 礼於が口を聞いてくれない。 今夜は、わりと暇だったので早めに店を閉めた。 「帰ろう、礼於。」 肩を抱こうとするとするりと逃げる。 「傑は嬉しかった?あの子シャム猫みたい。 傑の心を持ってっちゃうよ。泥棒猫だ。  悔しいけど、魅力的だ。」 礼於の綺麗な瞳から、涙が零れた。胸が締め付けられる。子供っぽいヤキモチに心が萌える。 「可愛いな、礼於。私はシャム猫より、ここにいるレオネコが可愛いよ。」 傑の大きな胸に飛び込んで、確かめる。その広い胸。優しい大きな手で撫でて欲しい。 (今まで、当たり前に独り占めしてた傑が、自分以外にも優しくするなんて、いやだ。)  帰って来てからずっと傑に抱きついて離さない。ソファに座って抱きついている。 (やれやれ、礼於にこんなに好かれていたのか、なんか嬉しいよ。) 「風呂に入らないか?ベッドに行こう。眠くないのか?」 「うん、傑はボクだけを見て。他は誰も見ないで。ボク、子供っぽいね。 16才の子に負けちゃいそうで怖いんだ。」 「考えすぎだよ、可愛い礼於。誰よりも愛してるよ。お前だけだ。」  次の日、店を閉めるタイミングで、またアオがやって来た。 「うろついてていいのか?危険だろ。」  後から慌てたガンスがやって来た。 「すいません、アオが部屋を抜け出して行くのが見えたのでタクシーで追いかけて来ました。」 「なんでガンスが来るんだよぉ〜。」 「バカだなぁ、イルスが心配するぞ。帰ろう。」 「ヤダ、傑、オレを連れてって。」 「傑って呼ばないで。アンタはマスターって呼べよ。もう来ないで。」 「礼於、やめなさい。アオさん危ない事はしないで。ガンスさんの言う事を聞いて。」 礼於の肩を抱いて、アオを見送った。

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