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第144話 アオ⑤

 アオはもう傑の事しか考えられなくなった。でもあの、礼於がピッタリくっついている。離れる事がない。 (ふん、あんなにいつも一緒にいたら、すぐに飽きられちゃうよ。ずるいよ。独り占めして。)  抱きついた時の広い肩。腕を組んだ時の太い筋肉。上腕二頭筋って言うんだっけ。そしてあの大胸筋に顔を埋めたい。  あの李の干からびた身体じゃダメだ。 アオはボスの李に抱かれた事があった。最初、雲の上の人だと思ったから必死で取り入ろうとしたのだ。それで、藤尾って言う人を殺ったら、ボスのそばに置いてくれるって言う約束だった。  でも刺すのは失敗に終わった。二回目は逃げてしまった。もう李にバレている。帰ったら殺されるのだろう。ドジを踏んで、始末される所を散々見て来た。チャイマは、下っ端だって平気で人を刺す。死体の始末を手伝わされた事もある。  別に李の事は好きではなかったが、上手く取り入れば、安泰だと思ったのに、鉄砲玉にされた。 「殺って来い。お前は半端だから、誠意を見せろ。」ってわけだ。  チャイマなんて血も涙もないんだな。みんな凍り付いたワニのような目をしている。  李なんか一番冷たい目をしている。 [バー高任]に初めて行った時、マスターが礼於を見る目が、ものすごく優しくて、愛してるのが伝わって来た。羨ましかった。自分もあの大きな人に抱かれたいと思った。  誰かと心から愛し合いたい。それがあのマスターなら,もう他に何も望まない。 また、今夜も見張ってるガンスの目を盗んで店が終わる頃に忍んで来た。ドアを開けて出て来た傑に抱きついた。 「傑、オレを抱いて。」 礼於は見てしまった。  傑の手が優しくアオの頭を抱いてキスした。

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