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第151話 傑と礼於

 カクテルをがぶ飲みした。本当に,壁に頭を打ち付けるハーベイの気持ちがわかる。 「なあ、ジンジャー、私はそんなに酔ってるか? 幻が見えるんだよ。ほら、ドアの前に。」  そこに礼於がいた。 「ボク、傑に会いたくて来ちゃった。」 「嘘だろ!本当に礼於がいる。 ジンジャー、礼於だよ。 私のたった一人の、大切な、嫁、だ。」 「スグル、泣いてるのか⁈ やあ、いらっしゃい。君が礼於? 遠い所を良く来たね。 スグルの家に案内するよ。」  ジンジャーが親切に家まで案内してくれた。 傑は、なんだかモタモタしている。 「ここがスグルの家。 一人で住んでるから遠慮なく。 じゃあな、スグル、また明日。」  ジンジャーは、傑は日本に帰るんだろう、と思っていた。 「やれやれ、スグルには永住してほしかった。」  傑は礼於を離さない。家に帰ってからずっと, キスしている。何も言葉が見つからない。  ただひたすらに、礼於を抱きしめてその手にたしかめるのだ。唇を離して 「ふうっ、傑、息が出来ない。」 「私はずっと息をしていなかった気分だ。 今やっと呼吸している。ああ、礼於。 本物だよね。魂だけ抜け出して来たのか? 14時間も飛行機に乗って来たなんて。」 「乗り継ぎもあったよ。面白かった。 傑に会えると信じてたから、何もかもが光って見えた。」 首に抱きついて 「傑のいない東京は色褪せて灰色だった。 やっと色のついた世界に辿り着いたんだ。」 「本当は逆なのに、な。 イギリスは灰色の街だ。曇り空が多い。」

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