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第152話 傑と礼於②
礼於が傑の顔を両手で包み込んでキスした。
「ホントに傑だ。」
声を上げて泣いた。
「わーん、ボク,ボク,頑張ったんだ。」
泣きながら抱きついて訴えてくる。傑はこの上ない喜びに包まれる。この手に礼於を抱いている。
「今となっては、私もよくわからないんだ。
自分の腕の中で人が死ぬって事に動揺した。礼於は誤解したね。私はあの子と何の関係も無い。
だけどあの子は人の悲しみを全部背負っているように見えたんだ。人の哀れ、を一人で引き受けている。私が勝手に思い込んだだけなんだけど。
ここに来てよく考えた。自分勝手な行動だったね。あの時は、礼於が恵まれてるのが不公平に思えたんだ。礼於は自分の力で頑張っているのに。
あの子は不幸の塊で、礼於は天真爛漫、誰からも愛されて日の当たる道を歩いている。美しく生まれた幸運を謳歌しているように見えた。
私はいらないだろう。礼於はひとりでも幸せになれる子だ。
日陰しか歩けない、生まれた時から生き方が決まってしまうあの子に憐れみを感じたんだ。
ごめんよ、礼於のせいじゃ無いのに。あの子は殺されるだろうって周りの大人達は知っててそれを止めさせなかった。
私も同罪だ。助けないでただ見てただけだった。防げたかもしれないのに。」
「ボクは傑がいなくなって、世界一不幸な人間だった。断言するよ。
何を見ても傑を思う。いつも何かが足りない。大事なものが欠けてるんだ。どんなに探しても見つからない、だって傑がいないんだ!」
涙で言葉が続かない。
「私の大事な礼於をこんなに泣かせた。
私が悪いんだ。大人になりきれてなかった。
礼於を守れなかった。
一番守りたい人を傷つけてしまった。」
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