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第154話 傑と礼於④
傑が無口になっている。今までだって饒舌な方ではなかったが、今は言葉が出ない。言葉なんかいらない。無言で抱きしめる。その手が身体中を弄る。
恋人達はいつも不安の中にいる。正解なんて無い。ゲイの世界では、嫁、と言ってくれるのが最大の愛情表現だ。
両手で顔を包んで激しいキス。礼於は傑が出て行ってから、誰ともセックスしていない。キスだってしない。久しぶりの愛撫に、心も身体も緊張している。
「礼於、固いな。どうした?
初めてのセックスみたいだ。可愛いな。」
誰も今の礼於を六本木の売れっ子ホスト、とは思わないだろう。赤くなっている。
耳元で
「礼於、何もしない方がいいか?」
礼於は心に引っかかっている事を思い切って訊いた。
「傑は、ボク以外の人を、抱いた?」
強い力で抱き寄せられた。
「そんなわけないだろ、おいで。」
傑の膝に抱かれながら
「ずっと不安だった。
ボクと出会う前はプロの人としてたって、言ったよね。この国はプロの人がたくさんいるでしょ。」
「売れっ子ホストの言葉とも思えない。
私が男を買いに行くと思うのかい?
逆に、礼於はたくさんモテただろ。あまり考えないようにしてたんだ。
もう、他に恋人が出来ても仕方ないと諦めてた。」
傑の胸に抱きとられて、上から見つめられる。
逞しい腕で抱かれる。
「一緒にいなくちゃダメなんだ。」
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