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第158話 ポットスチル

「わぁ、これがピート?」  蒸溜所の横はずっと湿原が続いている。掘り起こされたピートが積み上げられている。 「これを乾かして燃料にするんだよ。 スモークサーモンもチーズも、これを使うから独特な香りがするだろ。」 「うん、美味しかった。ハムも。」  蒸溜所の中に入る。隅々まで清潔に手が行き届いていて、生気に満ちた感じがする。案内してくれる誇らしげな傑の顔。素敵だ。  ランタン型のピカピカな蒸溜釜。 「ポットスチルだよ。」 「すごく大きいね。きれいだ。」 「初溜釜に並んで、再溜釜には精溜器が付いている。繰り返してアルコール度数を上げていく。  すごく簡単に説明したけど。」  樽に詰めて熟成させる。何年も、何十年も。樽もいろいろなフレーバーがある。シェリー樽やバーボン樽。ワインの樽もある。他にもいろいろ。  熟成期間でも味が変わってくる。ウヰスキーの味は、様々な要素の賜物だ。 「チモのホテルのバーでニューポットっていうのを飲んだよね。透明なの。」 「ああ、出来立てのウヰスキーだ。それを樽に詰めて時間をかけて熟成させるんだ。」 「傑はここで働いてるの?」 「ああ、ウヰスキーは面白い。 働いて、海岸を散歩して、毎日礼於の事を思ってた。」 肩を抱いてキスしてくれた。 「他の人なんか目に入らない。頭の中は礼於で一杯だった。」 「なんで帰って来てくれなかったの? ボク一人で待ってたんだよ。あの部屋で。」  礼於の瞳に涙が溢れる。どんなに抱きしめても足りない。 「帰ろう。礼於と一緒に東京に帰ろう。」 ジンジャーに話すと 「覚悟してたよ。また帰ってしまうんだね。 でも、アイラはスグルの第二の故郷だよ。」 笑顔で送り出してくれた。

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