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第160話 傑と礼於

「髪、伸びたね。」 傑の髪を礼於が洗っている。礼於の好きな長い髪。 「切ろうと思わなかったの?」 「ああ、何も変えたくなかった。 礼於と一緒に暮らしてた時のままで、いたいと思ってた。」 「傑はボクと別れるつもりはなかったんだね。 良かった。」 「考えてなかった。 ただ、あの時は逃げたかったんだ。」 「ボクを置いて?」 「何も考えてなかった。 だから一人になって、その事に打ちのめされたんだよ。私は卑怯だった。」  シャンプーを流して、とっておきのコンディショナーを使った。 「いい匂い。スベスベ、ツルツルになるよ。 色っぽいな、傑。」 「礼於も付けよう。同じ匂いをさせて、私のだ、って。」 (そこにおまえがいるだけで・・ 胸に幸せが満ちてくる。)  泡だらけになって抱き合う。 傑に大きなタオルで抱きとられて、風呂を出た。 犬のように頭を振る。 「おいおい、やめろよ。びしょ濡れだ。」 「アハハ、ちゃんと拭かないと服が着れないね、 裸でいよう。」  タオルごと抱きしめられる。腰にタオルを巻いただけの傑の胸に抱かれて、礼於は有頂天だ。 「傑、カッコいい。 胸の筋肉も、お腹も、太い腕も全部好き。 あ、と、背中の龍も素敵。」 「礼於がいたずらするから、また大きくなってしまう。礼於も触らせろよ。」 傑の膝に抱きとられて、 「いい匂いだね。ずっとこうしていたい。」  やる事はたくさんある。ディアボラにも挨拶にいかなければ。  礼於はただ、休みを取っていることになっている。お客さんから 「いつ、レオンは帰って来るの?」 「お休み長過ぎない?」 たくさんの声がかかる。

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