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第164話 知らない一面
タクシーで帰って来た。部屋に入った途端に礼於が抱きついて来た。
「傑、やだ、もう外に出ないで。
誰かに持ってかれちゃう。」
礼於の頭を撫でて
「私は礼於のホスト姿がカッコよくて心配になったぞ。」
「ボクがホストやったら心配?」
「そうだね、仕事が全く手につかなくなるかな。」
首に抱きついて
「ほんとに?ほんとに?」
「可愛いな。」
「傑がモテるからボクも心配。」
礼於の綺麗な瞳を見つめる。いくら見ていても飽きない。顔が整っているから愛した訳ではないが、その全てが好きなのだ。
傑が珈琲を淹れる。以前タカに教わって、美味く淹れる自信がある。(バリスタは元々バーテンダーの事だ。今では珈琲専門の技術者の様に使われる言葉になったが。)
「礼於は、ミルクをたっぷり入れて甘くするんだったね。」
そのゴツくて長い指で繊細な働きをするのを見ているだけで、礼於は感じてしまう。
「カフェ・オ・レ、出来たよ。」
傑が珈琲をブラックで飲んでいるその手つきにさえ感じてしまうのだ。
礼於が両手で大きなマグカップを持って、大切そうに少しづつ口に運ぶ姿が何とも愛らしい。
酒を飲まなくたって酔わせてくれる。
「なんか、傑って おとな、って感じだ。
ボクは子供っぽいかな?」
「ホストのレオンは おとな、だね。
私の前では子供でいいよ。
うんと甘えておくれ。」
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