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第167話 楊(ヤン)

 ガンスはアオが死んで抜け殻のようになっていた。アオを撃ったのはチャイマの下っ端で、いつか手柄を立てて、李の覚えめでたくのし上ろうとチャンスを狙っているような奴だった。  人を殺すのをなんとも思わない、自分もいつ死んでもいいと思ってるような奴。親の代から愛情など無く、人の情けなど感じた事はない。食うか食われるか。そんな生き方しか知らない。  ボスの李は、そんな命知らずのガキをたくさん飼っている。飼っている、というのだ。人を人とも思わない。  アオを襲ったガキは楊(ヤン)と言った。チャイマのガキはみんな厳しい生き方をして来た。話を聞けば同情してしまう。いちいち聞く暇もないが。  楊はまたチャイマに戻って来た。何処にも行くところは無い。  李から厳しい制裁があるのか、と思っていたが、意外にも何もお咎めはなかった。  警察に自首しても、ことのほか軽い判決だった。命の値段なのか、アオみたいなガキを撃ち殺したところで何という事もない。反省している様子を見せて、情状酌量になる。  警察は銃の素性だけを気にしている。しかし、楊のような半グレを、短期間でまた野に放てば 犯罪の最前線に逆戻りだ。 「ヤバくないの?また、誰か殺られる。 あいつらは消耗品みたいに次々に出てくる。」  この所、半導体景気で株が爆上がりしているからイルスは忙しそうだ。 「台湾の半導体関連が沸騰している。 そう言えば、アオは台湾人だって言ってたな。」  別にどうでもいい。早く忘れる事だ。イルスはそう思った。

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