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第170話 傑と礼於

 バー高任にガンスとイルスが来た。 「ご無沙汰してます。 アオが死んで以来ですね。俺たちもやっとこの頃 その話が出来るようになりました。」 「片桐さんはお元気ですか?」 「はい、それと佐倉組長が出所しました。 片桐代行と一緒に こちらにご挨拶に伺っていいものか、 聞きに来ました。嫌な思い出ですから。」 「全部藤尾さんに任せてあります。 挨拶なんて、そんな。 ご足労お掛けするわけにはいきません。 どうか、組長には、高任が、ご辞退申し上げる、とお伝えください。  気楽にお酒を飲みにいらっしゃるなら、大歓迎です。」  礼於は傑の大人らしい挨拶に、惚れ直した気分だ。  ガンスとイルスが帰って、礼於は傑に抱きついた。 「おっと、どうした?」 「傑カッコいい、大人だね! ボク、あんな事スラスラ言えないよ。」  毅然とした傑の態度に、感心しきり、だ。 礼於の頭を撫でて、 「あまり、思い出したくないだろ。 あっちの世界の人は、挨拶とかに拘るから。 ケンカ売りに来たわけじゃないからね。」 「じゃあチャイマのボスの李、とかいう人に謝って欲しいな。」 「もっと面倒な事になるよ。関わりたくないね。」 傑の肩にもたれて 「そうだね。キスして。」 傑が笑ってキスしてくれる。  店を閉めて仲良く帰って来た。 「明日は買い出しに行くよ。 礼於は欲しい物ないか?」 ベッドで傑の肩に抱かれて 「うん、欲しいのは傑だけ。」 激しいキスが返ってくる。  「は、は私も、欲しいのは礼於だけだ。」 「ボクいつも不思議に思う。 傑がいなかった時の記憶がないんだ。 思い出せないの。 あの時どうやって生きてたんだろう?」 「夢じゃないよ。こうして礼於をこの手に抱きしめてる。ずっと一緒にいよう。」

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