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第172話 新宿桜会

 倶楽部に桜会の佐倉大五郎と片桐竜治、ボディガードを兼ねてキム・ガンスとキム・イルスが招待された。  藤尾さんと名都が案内役だ。 「組長、御足労お掛けしますね。 一応、会員制倶楽部なもんで、奥に挨拶通して頂きたく、今日はここにお連れしました。」  奥から老人が出て来た。組長は立ち上がって 「は、お目にかかれて大変光栄です。 本日は御招待頂き、痛み入ります。  佐倉大五郎です。新宿で小さい組をやっております、極道で。」  半歩、後ろに控える片桐を指して 「嫁の片桐竜治です。 権現(ごんげん)誓った連れ合いです。」 片桐も頭を下げる。 「いいのぅ、権現に誓った、か。 久しぶりに聞いたわ。  新宿が落ち着いてるのは、佐倉ちゃんのおかげ、と聞いとるよ。  この前、チャイマのガキがオモチャで若い奴を殺ったのは、奴等、内輪揉めって事で収めたようじゃな。」 「は、私が懲役で留守にしている間に、飛んだ不始末で死なせてしまった。組預かりだった者でした。ガンスとイルスが面倒を見てたんですが。」 横で聞いていたガンスとイルスが 「エンコ(こゆび)詰めて詫び入れようとしたんですが。」 「馬鹿者!」 ご老人の一喝にその場にいる者は震え上がった。 「あのね、指詰めるのは流行らないの。 もう止めて貰いたい。 お前らの指なんか誰も欲しくないんじゃよ。」 藤尾さんが 「すみません。未だにこんな事言う若いのがいて。みっともない所をお見せしました。」 「おいおい、お前まで腹を切る勢いじゃの。 映画の見過ぎじゃ。」 ご老人は何だか楽しそうだ。 「昔は、よく切れるのを振り回す、血気盛んなのがたくさんいたものじゃ。  ハジメの父親、高任なんか、新撰組が大好きで 息子にハジメと名付けた。 新撰組副長助勤、三番隊組長、斎藤一の名前を貰った、と聞いておる。  真剣振り回して、人を切ってみたかった、と言っていたな。高任も危ない奴じゃ。」  そう言えば、高任家の客間には、大小二振りの日本刀が飾られているが,一つは“鬼神丸”だそうだ。斎藤一の刀。都市伝説なのか?

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