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第180話 親
「すごいね!こんなのイヤじゃなかったの?」
ミトの言葉にタカが
「ハジメと一緒なら、全然、嫌じゃない。
嬉しかった。みんなにカミングアウトしちゃったわけだし。」
「親は大丈夫か?
ハジメ、タカの親の承諾は取ったのか?」
傑が心配そうだ。
「前から呆れられてるからね。
タカの妹がすごく応援してくれて、
親も渋々って感じだ。」
「それでも、ハジメはオレの親に
“息子さんを必ず幸せにします”
って言ってくれたんだ。
親父は安心したようだった。お袋には泣かれた。
長男なのに嫁として持ってかれた、って。」
「タカを愛して幸せにすれば、わかってもらえるだろう。」
「あの、おっかないハジメの親父さんには挨拶したのか?」
「ああ、客間の刀で斬り殺されるかと思ったよ。
その後で親父が、“ハジメも高任家の男だな、男しか愛せないか”って笑ってた。」
母は離婚はしなかったが、公認の恋人がいた。
あの執事の加藤だ。ミトはハジメの家でずいぶんお世話になった。父にも男がいたから、暗黙の了解があった。
「そうか、私も父に礼於を見せないと、な。」
傑が言った。傑の父は、ハジメの父の弟だ。
日本刀を抜くような人ではないが。傑の父は,傑が幼い頃にはもう、母親と離婚していた。一方的な離縁だったそうだ。
母の顔を知らない。父にも、やはり男がいた。
しかし家には迎えなかった。外に住まわせて面倒を見ていた。傑に気を使っての事だったのか。
血は争えないと言うか、女を抱けない、という呪いだろうか。傑は、ハジメに惹かれる自分の想いに長い間苦しんだ。
ハジメも傑を愛していたが、やはり葛藤があった。高校時代まではお互いの事しか見えなかった。それで敢えて違う大学を選んだ。
ハジメと傑は、お互いの距離を無理に詰めなかった。
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