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第189話 大人
礼於を送って、一緒に菫ちゃんが来た。
「そうだ、傑、菫ちゃんにブルームーン作って。
すみれのリキュールが入ったやつ。」
ミトが薦めようと思ってたのに、先に言われてがっかりしてしまった。
礼於はホストのレオンになっていて、大人っぽくてカッコいい。スーツ姿がとんでもなくイケメンだ。
ミトは、ロジの顔を見ながら紫色のカクテルを口に運ぶ。
「うん、美味しい。」
表情がくるくる変わって愛らしい。ロジに頭を撫でられて機嫌が直った。
菫ちゃんがロジに挨拶に来た。
「お顔は存じ上げておりましたのに、ご挨拶が遅れて。」
そう言って名刺を差し出した。上条不動産の名刺だ。ディアボラのオーナーなどという名刺は出さない。ディアボラではあくまでも円城寺を表に出して立てる。
菫ちゃんが上条不動産をここまで大きくしたのは、こういう気遣いなのだ。決して出しゃばらない、わきまえた女社長だ。
ロジも滅多に出さないが名刺は一応持っている。菫ちゃんに差し出した名刺には
「東◯大学 物理学研究室
量子物理学博士 ロジャー・五十嵐・リチャーズ と書かれていた。
「まあ、凄い方ね。ノーベル賞候補になりそう。」
「いやぁ、それはウチの程塚という教授が、狙っているようです。」
「ロジはね、今度イギリスのバーミン◯ム大学の
ディーン教授と共同研究するんだよ。」
ミトが子供っぽく自慢した。
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