189 / 200

第189話 大人

 礼於を送って、一緒に菫ちゃんが来た。 「そうだ、傑、菫ちゃんにブルームーン作って。 すみれのリキュールが入ったやつ。」  ミトが薦めようと思ってたのに、先に言われてがっかりしてしまった。  礼於はホストのレオンになっていて、大人っぽくてカッコいい。スーツ姿がとんでもなくイケメンだ。  ミトは、ロジの顔を見ながら紫色のカクテルを口に運ぶ。 「うん、美味しい。」 表情がくるくる変わって愛らしい。ロジに頭を撫でられて機嫌が直った。  菫ちゃんがロジに挨拶に来た。 「お顔は存じ上げておりましたのに、ご挨拶が遅れて。」 そう言って名刺を差し出した。上条不動産の名刺だ。ディアボラのオーナーなどという名刺は出さない。ディアボラではあくまでも円城寺を表に出して立てる。  菫ちゃんが上条不動産をここまで大きくしたのは、こういう気遣いなのだ。決して出しゃばらない、わきまえた女社長だ。  ロジも滅多に出さないが名刺は一応持っている。菫ちゃんに差し出した名刺には 「東◯大学 物理学研究室 量子物理学博士 ロジャー・五十嵐・リチャーズ と書かれていた。 「まあ、凄い方ね。ノーベル賞候補になりそう。」 「いやぁ、それはウチの程塚という教授が、狙っているようです。」 「ロジはね、今度イギリスのバーミン◯ム大学の ディーン教授と共同研究するんだよ。」 ミトが子供っぽく自慢した。

ともだちにシェアしよう!