197 / 200
第197話 バー高任
「いらっしゃい。礼於はお疲れ。
グレース、お久しぶりです。お元気でしたか?」
「ハイ、スグル。鹿の骨の占いであんたを探したんだよ。レオンが可哀想だったよ。」
アイラ島にいた時の話だった。レオンは、グレースに背中を押されてスコットランドまで来たのだ。今は笑って話せるが、あの時は悲愴感があった。
「この二人は友達ネ。サルとトニーだよ。
タトゥーとマッスルが大好きなんだよ。」
「ああ、それでハジメが気に入られたんですね。」
「そうそう。傑の龍も見たいんだって。」
他にお客さんはいないので、傑がさっとシャツを脱いだ。背中を向ける。
「オー!グレート!ジャパニーズドラゴン!」
振り向いた傑の顔を見て
「オー、あの目だ。レオンのアーム。あの目だ。」
横に並んだハジメを見て
「オー、セーム、セーム。ジャストライク!」
サルとトニーは大喜びだ。
サルとトニーもゲイカップル、恋人同士なのだが、いい男には目がない。惚れっぽい。
それでいつも喧嘩だ。
「サルもトニーも諦めなさい。ハジメやスグルには、大事なワイフがいるんだよ。
ノーノー、好きになっちゃダメだよ。」
ハジメがタカを、傑が礼於を、それぞれ抱き寄せてキスしている。
「オーノー!」
大袈裟に驚く二人がいかにも外国人っぽい。負けずに熱いキスをしている。
おまえだけ、アイラブユー、なんて言っている。
ドタバタは終わって、グレースがいつものマティーニを注文した。
サルとトニーは喉が渇いたのか、
「ミントジュレップ、二つネ。」
タカがじゃあオレも、と言ってハジメも同じのを頼んだ。
「はいっ、おまたせ!
ミントジュレップ4つ!出来たよ。」
勢いよくカウンターに並べたグラスを見て
「傑、なんかラーメン屋さんみたいだよ。
レオンが笑っている。もうそろそろ礼於の顔に戻る時間だ。
ともだちにシェアしよう!