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第197話 バー高任

「いらっしゃい。礼於はお疲れ。 グレース、お久しぶりです。お元気でしたか?」 「ハイ、スグル。鹿の骨の占いであんたを探したんだよ。レオンが可哀想だったよ。」  アイラ島にいた時の話だった。レオンは、グレースに背中を押されてスコットランドまで来たのだ。今は笑って話せるが、あの時は悲愴感があった。 「この二人は友達ネ。サルとトニーだよ。 タトゥーとマッスルが大好きなんだよ。」 「ああ、それでハジメが気に入られたんですね。」 「そうそう。傑の龍も見たいんだって。」  他にお客さんはいないので、傑がさっとシャツを脱いだ。背中を向ける。 「オー!グレート!ジャパニーズドラゴン!」 振り向いた傑の顔を見て 「オー、あの目だ。レオンのアーム。あの目だ。」 横に並んだハジメを見て 「オー、セーム、セーム。ジャストライク!」 サルとトニーは大喜びだ。  サルとトニーもゲイカップル、恋人同士なのだが、いい男には目がない。惚れっぽい。 それでいつも喧嘩だ。 「サルもトニーも諦めなさい。ハジメやスグルには、大事なワイフがいるんだよ。  ノーノー、好きになっちゃダメだよ。」 ハジメがタカを、傑が礼於を、それぞれ抱き寄せてキスしている。 「オーノー!」 大袈裟に驚く二人がいかにも外国人っぽい。負けずに熱いキスをしている。 おまえだけ、アイラブユー、なんて言っている。  ドタバタは終わって、グレースがいつものマティーニを注文した。  サルとトニーは喉が渇いたのか、 「ミントジュレップ、二つネ。」 タカがじゃあオレも、と言ってハジメも同じのを頼んだ。 「はいっ、おまたせ! ミントジュレップ4つ!出来たよ。」 勢いよくカウンターに並べたグラスを見て 「傑、なんかラーメン屋さんみたいだよ。 レオンが笑っている。もうそろそろ礼於の顔に戻る時間だ。

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