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第11話 初日

修行センターの建物は左右に分かれていて、今回の修行ではお互いに接触しない。 アマギとはしばらく顔を合わせない。 護衛はできないが、修行センターの結界を信じるしかない。 すでに夜だったので、時間割の通り、夜の瞑想に入る。 指定された中庭に行くと、綺麗な夜空だった。 指定された岩の上に魔法陣がある。 そこにあぐらをかいて座る。 すると、脳内にガイドが流れる仕組みだ。 誘導に従って、呼吸をし、知覚に意識を向ける。 アマギのことで無茶苦茶になっていた気持ちがちょっとずつ落ち着いてきた。 本当にこんなことをしていていいのか、不安に思うこともあるが、今は考えないようにした。 アマギも瞑想をしていた。 自然を感じたのはいつぶりだろうか。 ずっとこうしていたかった。 時が止まったようだった。 ―――――――――――― 貧相な布団を敷き、就寝する。 時計はなく、起床は部屋に流れるチャイムで起きるらしい。 明日以降は、清掃、瞑想、食事、入浴、振り返りくらいしか予定がない。 孤児院の時から集団生活だったので、一人の時間というのは逆に贅沢で新鮮だ。 アマギは元気だろうか。 意外とアマギはこういうのは得意そうだ。 そう思っているうちに眠ってしまった。 ―――――――――――― 朝早くから起きて、一人、時間割をこなしていく。 使用している部屋の掃除。 朝食、後片付け。 瞑想。 魔術の勉強。 昼食。 瞑想。 魔術の勉強。 瞑想。 振り返り。 夕食。 入浴。 瞑想。 就寝。 とにかく瞑想だらけだ。 最初は新鮮だったが、徐々に雑念だらけになってきた。 ユンには、直接話すことができなかった。 ユンも北側への派遣が決まり、準備にバタバタしていたのだ。 何もなければいいが、万が一ということもある。 兵士の仕事に絶対の安全はない。 本当はちゃんと見送りたかった。 振り返りの時間が来た。 指定された部屋に行き、魔法陣の前に座る。 魔法陣が輝き出して、声が聞こえてきた。 『私は、神官ロータス。あなたの修行の成果を確認します。』 いくつか、ロータスから質問を受け、答えたり、考えたりする。 『あなたにとって、愛とは何ですか?』 そう問われて、戸惑った。 ユンには愛はある。 アマギにも、愛はないわけではない。 愛情ならある。 ちょっとした言葉の違いだが、何が違うんだろう。 今日の話はそこで終わった。 就寝前に、魔術の本で「愛情」と「愛」の違いを調べる。 「愛情」は愛おしい感情で、「愛」は執着や期待ではなくただひたすら与えること、とある。 たしかに、ユンには自分の全てを与えても構わない。 「愛」の理解はできた。 アマギへの愛情は……可愛い、可哀想で、何かしてあげたい、なんとかしてあげたいという気持ちが確かにある。 また、魔術の本には、こう書いてある。 『悪魔は、人間の神聖な感情すら利用してくる。』 ユンの幻覚でしてしまった時がそうだろう。 ここの修行は精神的にはハードだが、やっぱり意味がありそうだ。 なんとか一日目は終えられて、少しホッとした。 シモンは床に就いた。 ―――――――――――― 夜になってなり、アマギは入浴していると、自分が興奮してきているのがわかった。 自分の裸体を見ていると、シモンの裸体を思い出す。 シモンの体に触りたくてたまらない。 シモンには確かに好感を持っていたが、どうしてこんなに欲しくなってしまったんだろう。 初めてキスをしたとき、気持ち良くて、本当はその場で最後までしたかった。 あとで、と言われて焦らされた後にシたときは快感がとまらなかった。 そのあとも何回か機会があったが、結局挿入されたのは一回だけだ。 シモンに、入れられたい。 鏡を見ると、瞳の色が青からやや紫色になっていた。 淫魔化しているからだろうか。 シモンが、俺の体を見て欲情するようになったのは分かっていた。 そんなシモンを見るのは正直愉快だった。 妄想でも俺のことを考えるようになっている。 早く、シモンを誘惑したい。 もっと、シモンに犯されたい。 アマギは興奮してきた自分のモノを見た。 このセンターでの自慰行為は厳禁だ。 連帯責任で罰があるから、やるわけにはいかない。 アマギは呼吸を整えてから風呂場から出た。

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