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第14話 北へ

車を走らせると、アマギは眠ってしまったようだ。 シモンは、北に派遣されたユンのところに行くつもりだった。 シモンの振り返りの時間、ロータスはザニスのサディスティクな一面について、シモンに吐露した。 だが、邪魔をすれば、神官二人は今の地位を追われる。 シモンも軍隊にはいられないだろう。 それでもアマギを助けに行くか、と言われた。 シモンは迷わず行くことにした。 装備を整え、逃亡準備をしていたら助けに入るのが遅れた。 アマギには、また可哀想なことをした。 ロータスたちは、トマスとリンデンにも連絡を取って、北のツカドという街で落ち合うことにした。 ユンもその街にいる。 ツカドに入る前に、小さな村に寄った。 この地域は、反国家宗教派だ。 大神官の手から一時逃れられる。 アマギを起こして、宿に入る。 深夜だったが、ロータスが予約をしてくれていた。 アマギをベッドに座らせ、抱きしめる。 シモンが駆けつけたとき、アマギが自分から差し出すところだった。 あのアマギが簡単に自分からそうするとは思えない。 凌辱が始まってから、時間は経っていた。 すでにかなり酷いことをされていたのだろう。 「シモンさん……。」 「何?」 「お風呂に入りたいんですけど、一緒に入ってくれますか?」 「いいよ。今、準備するから。」 湯船にお湯をはり、後ろからアマギを抱きしめるように二人で入る。 体があったまったので、シモンは、アマギの髪と体を洗ってやった。 風呂から上がり、二人でベッドに寝そべる。 シモンはアマギを抱きしめた。 「アマギ……。」 「ん……?」 「最後まで、がんばるんだけどさ。どうしようもなくなったら、一緒に逃げよう。」 シモンは笑った。 「……なんで、そんなに俺のことを……。ザニスを怒らせたから、もう兵士でもいられなくなっちゃったんですよ……。」 アマギは驚いて言った。 「あんな変態が大神官の国なんて、ごめんだよ。兵士なんか、やめてやるさ。」 「……じゃあ、ユンさんのことは……?」 「ユンのことは好きだよ。でもね、ずっとユンといたいかと言われると、ちょっと違うんだ。どちらかが、結婚したら、そういう関係は無くす話もしてたし。」 「そうなんですか……。」 「ユンはね、家族なんだ。ユンが幸せになるのに、相手が俺じゃなくてもいいんだ。」 「…………。」 「でも、なんかアマギは、俺がそばにいなきゃいけない気がして。」 「それは……責任感から……じゃないですか?」 「最初はね。でも、あそこの1週間で、俺、結構アマギのことが好きだったんだって、わかったんだ。」 「……えっ……。」 アマギは驚いて少し上半身を起こしてシモンの顔を見た。 「なんで……?」 「半年経って、仕事も慣れて来たから、もっとアマギと話したいな、って、思ってた矢先だったんだ。先に体の関係になっちゃったけど……まあ、俺、ぶっちゃけ、エロいアマギが好きだよ。」 意外なセリフに、アマギの目から涙がこぼれた。 シモンが指で涙を拭いてくれる。 「でも……俺の過去を聞いたら……嫌になると思うよ。」 「……聞いてみなきゃ、わかんない。」 シモンは切なそうな顔をした。 「……思い出したんです。俺、村が他国の兵士に占領されたとき、その兵士たちに犯されたんです。俺が大人しく言うこと聞けば、母さんと姉さんには手を出さない、って。それは、王国の救助が来るまで続いて…。俺は、家族のために頑張ったのに、母さんと姉さんは俺を汚い物みたいに接するようになって。村の人も、なぜか俺がそれで金を稼いでるって思ってたんです。」 アマギは、傷ついた少年の顔になっていた。 「あいつらは、俺がいやらしい体をしてるから悪いんだって、言って…。俺は、あいつらを殺してやりたいくらい憎いのに、体は興奮したり気持ちよくなって最悪でした…。」 アマギは枕に顔をうずめた。 シモンはアマギを背中から抱いた。 「アマギ……辛かったね。」 アマギは泣いている。 「俺は、アマギの苦しみを軽くしてあげることはできないかもしれないけど、アマギの幸せを願ってるし、アマギのそばにずっといたいと思ってるよ。」 シモンはアマギを強く抱きしめた。

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