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第15話 ツカド
ツカドの酒場の地下に、シモン、アマギ、トマス、リンデル、そしてユンが集まった。
これまでの経緯は、アマギがいないときに、シモンから3人に話した。
「じゃあ、こっちサイドの話は俺がまとめて話そう。」
全員の顔を見てから、リンデルが話し始めた。
「まず、ビリーだが、故郷に帰省していたところをしばらく監視をつけて見ていたが、ひとり親の母の看病は本当だった。難病で高額の治療費ほしさにアマギへの暴行に加担したらしい。依頼したのは男娼カペラ。お前たちが最初に出会った、あの少年だ。」
まさか、あのあどけない少年が黒幕だったとは。
シモンとアマギは驚いた。
「ビリーいわく、カペラは、アマギが気になっていたらしく、ビリーに催淫効果のある薬の注射を依頼してきた。ビリーは、アマギが医務室で性行為をしていたのも知ってたし、過去に振られた腹いせもあり、金と引き換えに請け負った。襲ってきたもう1人の男は、ビリーの部下だ。
カペラが用意した薬は、鳥のインキュバスではなく、本物の淫魔インキュバスの魔術がかけられていて、アマギはインキュバス化して行った。
カペラの素性だが、ある貴族のおかかえ高級男娼だ。この貴族が、大神官ザニスと親友なんだ。ザニスに情報が流れたのは、俺たちの動きを見ていたカペラのせいかもしれない。」
トマスが口を開いた。
「俺が手配したのに、逆にアマギに辛い思いをさせてら申し訳ない…。」
「いえ……仕方のないことなんで…。」
アマギが答えた。
「たかが1人の男娼ができることじゃない。俺たちはカペラ自身が淫魔インキュバスだと思う。狙いはまだわからないが、大神官すら手玉にとったならかなりの大物だ。少なからずアマギになんらかの執着がある。このまま終わりだとは思えない。」
「……カペラに会えば、インキュバス化をとめる方法がわかるかな……?」
シモンが言った。
トマスが答えた。
「なかなか現場レベルでは知能の高い魔族とやり合うことがないからね。正直わからないよ……。」
不安だが、ぶっつけ本番で行くしかない。
「ユンには、この街での潜伏に協力してもらう。二人は今はまだロータスやビャクナのところにいることになっている。俺は、大神官の逆襲がどうでるかの対応に回るよ。」
「すみません、よろしくお願いします。」
シモンはリンデルに言った。
「アマギ、シモン、大変だったね。」
ユンが言った。
「ごめん、大変なときに、押しかけて…。」
「はは。俺、こう見えて、ここではちょっと偉いんだよ。二人を匿うことくらいはできるさ。」
ユンは爽やかに笑った。
「じゃあ、俺とトマスは城下にまた戻るよ。アマギ、シモン、ユン、がんばれよ。」
三人はうなずいた。
「あ、あの……!」
アマギが声を出した。
「皆さん、本当にありがとうございます……。俺一人のために……。」
リンデルが口を開いた。
「それは、違う。今回はたまたまアマギが被害に遭っただけで、これは人間と悪魔の戦いそのものだよ。ライライチョウを使って快楽に溺れた、人間に対する罰さ。だから、俺たちは大切な人を守るために戦わなくてはならない。それが、兵士だろ?」
シモンもユンも頷いた。
「……ありがとうございます。」
「気は抜けないが、休める時は休めよ。」
そう言って、リンデルとトマスは去っていった。
―――――――――――
ユンが宿の2階の一室を手配してくれた。
仮に襲撃があっても、逃げやすい場所にある。
「疲れてるだろ?寝てもいいよ。」
シモンはアマギに声をかけた。
「いえ、昨日、だいぶ休めたんで、大丈夫です。」
今日のアマギはスッキリしているように見える。
いざこうして落ち着くと、何を話していいかわからない。それじゃ本当に体目的みたいだ。
と、シモンは思った。
ベッドに腰掛けたアマギは言った。
「カペラのこと、俺はほとんど覚えてないんです。どんな子なんですか?」
「ああ、あの時、もうアマギは魔法にかかってたからな。細身で、化粧をして、見た目は女の子みたいだったよ。飄々としたかんじで。」
「そうなんですね……。」
「まあ、かなり慣れた感じだったなあ。あの時の言い方だと、自分もライライチョウを取りに来て、踊りを見たから倒れたって。で、目を覚ましたら俺がいて。急に頬にキスされたり、尻を触られたんだよ。」
「……へぇ。イチャイチャしてたんですね。」
冷めた声だった。
「そんなんじゃないよ。強いて言えばセクハラされたんだよ。」
アマギはシモンの横に移動し、シモンの頬にキスをした。
「やきもち?」
「カペラは、どんな気持ちだったのかな、って思って、やってみました。」
「淫魔なんだから、単にエロい気持ちなんじゃないの?」
「わからないですけど、一応ライライチョウのルールだと、最初に見た人としたくなるじゃないですか。シモンさんに軽くキスして、お尻触ったくらいで済むのかな…って。」
「ああ。そのあと、俺とアマギのキスは見られたよ。最初の……結構濃厚なやつを……。」
「言い方、キモいんですけど。」
冷たい視線だ。
「な、なんだよ。ちょっと思い出したら恥ずかしくなったんだよ!」
急にいつものシモンの調子でびっくりする。
「もし、俺がライライチョウで興奮してる時に、シモンさんが目の前で他の人としてたら、どうなるかなと思って。」
「……ユンもいるし、やってみる?」
アマギに耳を引っ張られる。
「いたたっ!冗談だよ!」
「もし、カペラがやきもちをやいて、俺を痛い目に遭わせたいなら、辻褄が合うかな……って。」
「そっか……飄々としてたから、そんな風に見えなかったけどな……。」
「………………。」
アマギは床を見つめた。
淫魔の気持ちなんて、エロい気持ちだけに決まってる。
でも、ザニスにそう決めつけられたときは嫌だった。
そう考えて黙っていると、シモンがアマギの頭をなでて頬にキスをしてきた。
「シモンさん…。ムラムラしてるの……?」
「そんなにしてないけど、つい触れたくなるのが恋人同士なんじゃないの?」
シモンとユンの世界ならそうだろう。
性欲をいきなりぶつけられてきた自分には無い感性だ。
恋人同士という言葉がこそばゆい。
アマギはシモンの唇にキスをした。
ベッドに置いた手が重なる。
シモンはアマギを静かに押し倒した。
首に優しくキスをする。
「あ……っ。」
ドキドキして、興奮してくる。
「俺は……普段お前にバカにされがちだけど、そういうお前がこんな可愛くなっちゃうのが好きなんだよ。俺の前でだけにしてね……。」
返事も聞かないまま、シモンは首筋を舐めた。
「あんっ……!あっ!わ、わかったよ!ん……っ!そうするからぁ……!」
シモンがアマギの服を静かに脱がしていく。
「……でも、それって……。毎回のシモンさんがちゃんと俺を満足させてくれる……ってことですよね?」
シモンの動きがピタッと止まる。
「プレッシャーをかけるなよ……。俺、結構そっちに関しては、メンタル繊細なの。」
「……そうなんですね。大丈夫ですよ、俺、演技には自信があるんで。」
「……い、言ったな。ああ、いいよ。演技できる余裕があるならね!」
シモンにキスをされながら体を愛撫される。
アマギの体もすぐシモンを求めた。
ああは煽ったが、修行センターにいたときからシモンとしたかった。
愛し合いながらセックスをしたのは、アマギにとってこれが初めてだった。
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