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汚辱 3

(※排泄描写があります。) 「出したまえ」  そう言って、空の桶を置いた。  とうに限界は超えて、精神力だけで意識を保っている蒼白な顔を見る。  ぐるぐると唸っている低い腹の音、いくつも玉を作っている額の脂汗。  いくら鍛錬を重ね、武器を取り戦場に立つ者としての強靭な体であったとしても、その欲求に抗えるはずはない。  排出されるべきものが、体内にとどまるのは、原始的な欲求として避けようとする種類の感覚のはずだ。  だがそれを拒否している。  その強情さはバルドの想像以上であった。  アルヴァは血の気のない顔のまま、目を逸らさずにバルドを見据えている。 「出させなさい」  形ばかりは笑みに細めた冷たい双眸で見下ろしながら、顎を動かした。  その言葉は背後にいる従僕に向けられていた。  太い指が尻の間に伸びて、閉じた窄まりに捻じ込まれる。 「止めろ!」  悲痛な声が上がる。足首を繋ぐ鎖が、がちゃがちゃと鳴った。  掲げられた脚で宙を蹴りもがいたが、拘束する片手は鉄のように微動だにしない。不自由な四肢では抜け出せるはずもなかった。  深く入りこんだ指が、後孔の縁を押し拡げるように動く。  アルヴァは両眼を見ひらく。言葉にはならない悲嘆が映っていた。  決壊する。  ひびが入った矜持から血が滲むようだった。強固に守ってきたプライドを踏み躙られることを、死よりも恐れている。 「ン、ぐ……ぅ、あぁ゛っ……ん゛ああ゛ぁ゛ぁッ!」  天井を高く仰いで、絞り出た声が密室に反響した。悲鳴に似た絶叫。  必死に堪えていたものを抉じ開けられる絶望と屈辱に、身を引き裂かれる声だった。  三歩ほど下がって、桶に放出される奔流を見ていた。  破裂音と共に、放物線を描くほどの勢いで、濁った汚水が満ちていく。  塊も混じった生々しいそれと、ただよってくる悪臭は間違いなく、この美しい騎士の腹の中身なのである。  つつましく噤んでいたそこが、盛り上がっては口を開ける。その度に水混じりの液体と半固形物が、止めどなく噴き出てくる。  急激に腸の容量が減少したことにより、体に変調をきたしているのか。  天井に向いたアルヴァの瞳はなかば光を失って、焦点が合っていなかった。恐らく、ほとんど意識がない。  紙のような真っ白い顔色で憔悴しきっている姿は、嗜虐と情欲を煽る。  背後から拘束する役目の下男も、そういう嗜好の者を選んだ。秀麗な容姿と、決してけがされぬ気高い精神を持ち得る男に対して、サディスティックな欲を身の内にいだいている。  尻に回された太い指が、再び後孔に入り込む。手が汚れるのも気にせず何度か、ぬかるんだ粘膜を掻き混ぜた。 「……ん…ぅ、っ」  指一本分広げられた、濡れた赤い内壁がひくりと収縮する。痛みではない感覚に、うめくような声を洩らした。  大量に汚水を吐き出した後であり、内容物は空に近かった。濁った湯の残りが、ぶびゅと音を立てて少量溢れる程度だった。  深くねじ込まれていた節くれ立った指が、腸壁を拡げながら引き抜かれると、太腿がびくりと震えた。 「起きているか」  近づいて顔を軽く叩くと、瞳がぐるりと動いた。 「触るな」  蔑みの色をやどした、背筋が凍るような眼で睨めつけている。  顔色は蒼白なままだが、表情は毅然さを取り戻していた。  バルドはかまわずに頬に張り付いた黒髪をかき分けながら、微笑を向けた。 「汚れてしまったね。体を清めようか」  自らの出した飛沫のついた尻を見やる。 「彼がやってくれるだろう」  言いながら、両脚をまとめて拘束している背後の従僕を視線で指した。  支配者を気取りアルヴァを見下ろす男は、たたずまいこそ穏やかであるが、元より意見を求めてなどいない。  壁の傍で椅子に座ったまま、すうすうと静かな寝息を立ててセフェリノは眠り続けている。  彼が目の前で起こる凌辱に気づくことはなかった。  年若い主が意識を取り戻さない限り、アルヴァにバルドに逆らうという選択は存在しないのである。

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