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焦らし 2

 上気した肌をさらす、美貌の男が眼前に沈黙を守りながら座っている。  衣服を全て取り払われ、虜囚のように戒められているために見る影もないが、男は王国の騎士であるという、羞恥に俯く若い男。彫刻めいて一分(いちぶ)の隙もなく鍛え上げた見事な体つき、その長躯に見合う長い手脚。  視線を伏せているのをいいことに、無遠慮にしげしげと眺め回していた。  現在ばかりは従僕らしい格好に身を包んだ彼は、バルドに雇われた私兵であった。彼は異性よりも男を好む。細身の女のような見目よりも、肉体を資本にしているような逞しい者がいい。  自負心の高い男。若く張りのある肌。  目の前のこの若者を上玉だと評価するからこそ、バルドを主と仰ぐ。戦士らしい者が抑えつけられている姿に、欲情をいだく感性は主と同じなのである。  伸びてきた手が尻の間に入っていくのを見て、変わった形状の椅子の意味を知ったように、驚きと恥じらいの表情を見せた。 「そこは、っ……」  足首を繋ぐ鎖の長さは肩幅より少し広い程度だ。  閉じようとする膝を後ろのもう一人が、押さえ開かせる。  石鹸と湯のぬめりを使い、陰嚢と会陰を揉み込み、そのさらに後ろに伸びる。  首筋が赤く染まり、吐息が乱れる。肌が白いために上気するとよく目立つ。  さっき腸内を洗われた時は多少緩んでいたが、今はもうすでに固く小さく閉じている。間違いなく初物だ。  この容姿で手を出されていないのは、よほど良い家筋か、幼い頃から他人を寄せ付けないくらいの武技の腕前であったのか。  頭の上に置いた手は、無抵抗を示すために動かさない。それは、たとえ排泄の穴をくじられる不条理にさらされようとも変わらなかった。  伏せた額を持ち上げさせ、その顔を見た。羞恥を浮かべているが、こちらに向いた目には決然とした色がある。  理不尽な所行を咎める軽蔑ではなかった。これは雇い主の命令による行為だと信じているようだ。自らが耐えれば終わることだと割り切った表情だった。  繊細さと勇壮さを兼ねる容貌と、絵に描いたような清廉潔白な性質は、あの気難しいバルドを夢中にさせるだけはある。  滑りを利用しても後孔には、指先を爪までの長さを挿れるのがやっとだった。縁をゆるゆるとなぞり、緊張をやわらげようとする。 「あ…ぁ、っ……」  思っていたよりも固い窄まりを緩めるために、合間に会陰を押し込むと顎が上方に仰ぐ。ぞく、と腰を動かした。  脚を押さえているもう一人に視線を送る。左肩の新しい傷以外には、目を引くような痕は少ない。潔癖なほどの白い体で赤く主張する両方の乳首を、ぬめる指で軽くはじいた。  半勃ちの中心が、ぴくりと跳ねた。同時にひくついた後孔の浅いところへと指を埋める。  色付いた乳輪にも、くるくると指を這わせている。滑る指で、硬く勃起した乳首を挟み、捏ねるのに合わせて、浅く挿入させた指を深くまで進めていく。  鎖骨あたりにまで赤みが差し、石鹸に練りこまれた香りが、にわかに強くなったようにも思われた。  白くすべらかな膚はそれほどに魅力的であった。  眉を寄せて息を呑んだ。 「ッあ……ぁ……ん、ん……っ」  乳首への刺激に連動させるように、小さな穴にうずめた指をゆっくりと抜き挿しする。まだ少し抵抗はあったが、石鹸の滑りによって引っ掛かりはない。  無骨な太く長い指が、全て埋め込まれ、再び指先まで引き抜かれる。もどかしく思える程に緩慢に、丁寧にそれを繰り返す。 「はぁ…ぁッ……うあぁっ……」  その感覚に、たまらなそうに腰を震えさせた。背をしならせ、唇から洩れる息が熱っぽく吐き出される。  どれだけ昂ぶっても、この緩い刺激では絶頂にはたどりつかない。  だからこそ、快楽は体の中に確実に積み上がっていく。小さな火で煮つめるような時間をかけて、二人がかりで清潔すぎる肌を性交に向けてつくり変えていく。  気の遠くなる焦らしを経れば、最後に待つ深い絶頂は後戻りできないほどの脳を蕩かす快感になるはずだ。そのために決して急いてはならない。

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