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焦らし 3

 腹の内容物をひり出す様を曝した後では、肌を撫で回されるくらいでは目くじらを立てる意味を得られない気がしていた。すでに己はもう、ほだされているのかもしれない。  セフェリノを人質のように扱うバルドは憎いが、召使いの装いの彼らはその部下として働いているだけだ。  羞恥はあったが、仇を見る目で睨む必要はないのではないか。  そう考えるほどに、疲弊が未だ癒えていなかった。  しかし、尻穴を拡げられることは、辱めに相違なかった。  何よりもそこに指を抽挿されて、背筋を駆け上がるものが排泄感に似た快楽に変わっていくのは、あまりに屈辱的だった。  二本滑り込んだ指が、不浄の穴を拡げる。  同時に乳首を弄られれば、より熱を帯びて、性感を高められた。  湯に混じって先走りが溢れてくる。体の内側から快感を引き出される。それは決定的なものにはならない。それが甘ったるい苦しみになる。  声を抑えられなかった。気持ち良いと感じてしまうのを否定できない。  続けられれば、耐えられると思えない。喉を反らせながら、頭を振った。 「……ッ、く……ぅ、あぁっ……もういいだろう……ッ、もう……」  太い指の関節の硬い感触が、腸壁のやわい粘膜を擦ると下腹が戦慄(わなな)く。内壁の腹側も背中側も、左右も、余すことなく押し込まれて、腰が浮いた。  その抜き挿しに合わせてぬるぬると乳首を捏ねられ、もてあそばれる。胸と後孔の感覚をまるでひとつに繋げられるようになぶり続ける。  アルヴァはひとりでに洩れ出てくる声を喘がせた。  決して言葉にはしないが、脚の間で首をもたげる中心を擦りたい衝動が湧いてきている。体はずっと解放を求めていた。  今性器を扱けばすぐに達してしまうだろう。  だが他人の目のあるところで粗相はできない。できるはずがなかった。  焦らされ続けている体の疼きがひどくなる。  自身の欲望に意識を向けると、その先に待っている恥辱に考えが至る。  あの男はアルヴァに伽の相手を望んでいる。方法は拡げられた後ろに、男を受け入れる他にないだろう。これはそのための前準備であるのだ。  プライドか忠義心か、どちらかを選ばねばならない。  わからない。どうすればいい?  そう自問しようとも、ひとの肌を知らないアルヴァに出せるはずがなかった。  深い眠りにつく、主君のあどけない寝顔に思いをはせた。  踏みにじられても貫くべき信条とは何なのだろうか。耐え難い辱めも諦念の末に受け入れることなのか?  泣きたい時のように、喉の奥が締め付けられた。

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