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摩耗する 2

 上着を脱いで軽装になったバルドはアルヴァの前に座った。  こめかみから耳までをくすぐるだけでも、短く息が洩れるような敏感な肌には、湯上がりで朱が差している。  感情では目の前の男を嫌悪しながらも、体は昂りを隠しきれない。 「上手におねだりが出来たら、すぐにでもイかせてあげるのだけれどね」  顎の下、首筋に触れる。羞恥と興奮に分かりやすいほど赤く色付いた。 「焦らされて疼く後ろに太いものを挿れて欲しいと、突き上げて気持ち良くして欲しいと言えたら、いくらでも擦って射精させてあげるのに……こんなに辛い思いをしているのは、君が素直ではないからだ」  頬を両手ではさんで、アルヴァを見つめた。バルドのしびれるように甘く低い声。  熱をはらんだ体には、その声さえも愛撫になる。  眉根を寄せて、無言で睨みつけ続ける。口を開けば、声と息が濡れて、さらに羞恥に追い詰められてしまう。 「この苦しさから救って欲しいなら早く言った方がいい」  ベッドがわずかに沈む。  後ろに誰かが来たようであった。  この場所で動けるのは、唯一巨躯の従僕しかいない。  腰を覆う裾を払い、着衣である体のなかでそこのみ露出した臀部の中心に、何かがあてがわれる。  表面がぬめる、肌の温度と同じくらいのあたたかさのつるりとした物。指よりも少し太い程度か。 「……ふぅ、っ……ン、ぅッ……」  ゆっくりと埋めこまれていく棒状のそれは、表面がいくつかのくびれになっている。楕円型が連なっているような形は、挿入される時に巧みに後孔の縁をこすっていく。  オイルが豊富にまぶされて滑りがよく、ぬるぬると入り込みながら内壁も擦り上げられる。指での刺激とは違う、どうしようもない心地よさに、吐息と声が洩れた。  腰が浮いて、太腿もがくがくと震える。快感を自己では制御できない。 「あぁっ……う、あッ……ンッ、んん…っ」  体が熱い。挿入された道具が深く侵入していくほどに、奥から熱くなってくる。  抽挿はやはりひどく緩慢だった。  快楽を追い上げていくのに絶頂には至らせない。道具のくびれの一つ一つで、粘膜のひだを数えるように出し挿れされる。 「おもちゃでこんなに感じていたら、これをいれられたらどうなるのだろうね」  前にいるバルドが、アルヴァの頬を持ったまま自己の下腹に鼻先を近づけさせる。  その中心、膨らんだもの。柔らかく質の良い革製のパンツをつきあげる硬さのある塊。  何を押し付けられているのかは、理解したくなくとも脳裏にはっきりと浮かんでいた。 「……く…ぅ、ッ……ン、っ……んぅ…っ」  後ろでは、淫具がゆっくりと引き抜かれ、またゆっくりと深く挿し込まれる。その度に、じわりじわりと体が熱が持つ。  噛みしめた歯の間から、ふうっと息を吐き出した。  淫具のくびれが後孔を拡げながら通ると、ぬぽ、と音がしそうな感覚で抜けていく。  脊柱を絶え間なく駆け上がる、ぞくぞくとした性感に、意志に反して侵入物をきつく食い締める。  目の前がわずかに白んで、腕から力が抜けそうになった。体の内側を焼く快楽が、頭から足先までを支配している。  脳髄まで溶けるほどの責め苦だった。  しかし、眼前の男に縋ることはしない。矜持にかけて絶対に、あってはならない。

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