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侵犯 1
バルドは口づけていた唇の端から、少しずらして吐息で湿った赤色に唇を重ねる。
触れるばかりのキスから、ひどくやさしく舌で表面を撫ぜた。微かに唇を開いて、それを受け入れる。
拒めば、焦れた体を更にまたなぶられると感づいていた。
解放を早められるなら、何を求められても拒否はしない。恥を忍んで発した欲情を、再び弄ばれ抑えつけられたら、次は本当にすすり泣いてしまうかもしれないと思う。それほどに追い詰められていた。
潔癖な肌は性的な触れ合いに耐性がない。
鼻先や、感覚の鋭敏な額で感じていた、硬さのある熱を下腹に重ね合わされている。
歯列を嘗められ誘い出され、おずおずと開けた。口腔に舌が入り込んでくる。
否応なく絡め取られ、舌の裏から上顎まで、味わうようになぞっていく。
くちゅ、と唾液が混ざる水音にも、押し付けられた脈打つように熱く太い勃起にも反応し、体はさらに火照りを帯びていった。
先走りで滑り擦れあうと、そこから生まれた性感がぞくぞくと駆け上がり、腰が浮いた。
舌を絡め合う濃厚なキスにも、全身が震えて肌が粟立ち、鈴口からとめどなく溢れて濡れそぼる。
物欲しそうに腰を押しつけてくるのは無意識なのだろう。
降伏を宣言してしまった体は、ただ快楽を求めるだけだ。
素直になれば、一層に愛おしくなる。
バルドは角度を変えて口づけを深めながら、片手を自らに添わせて、ひくひくと収縮し息づく後孔に当てがった。
「んん…ッ……ン、ン゛……ッ!!」
先端を埋め込んでいった。傘の開いた太いカリを受け入れるには、まだ狭い穴がこじ開けられる被虐が歓喜に変わっていく。
浅くきつい部分を通り抜ければ、やわらかく熱い体内に迎え入れられる。引き絞りながらうねる内壁が、剛直をねっとりと包み込んだ。
首筋に、腋窩に、じわりと滲んだ汗が甘い芳香を放つ。
唇と後孔で男を受け入れるという、今まで考えたこともなかったであろう倒錯に、体温が高まる興奮の匂い。
性急にはせず、腰を進めていった。
「……ン、ぅっ……ん゛ッ……ぅぅ、ッ………!」
深いキスに塞がれ、鼻から洩れる吐息と喘ぎは、切羽詰まったように忙しなく繰り返される。
体がびくんと跳ね上がり、臍の下あたりが痙攣している。
とろけそうに熱い腸壁は、その震えに合わせて収縮と弛緩をする。
奥までを貫いていくと嘗めまわすように、ひだが絡みついてくる。下腹と腰から湧き上がっている震えは、しばらく止まなかった。
さっきまで入り込んでいた淫具とは、比べものにならない太さと長さ。
真っ直ぐに突き入れられ、抜き取られる単調な刺激でも、浅い絶頂感を味わった。掴まれた脚がびくびくと跳ねる。
出した先走りでシャツと自らの雄芯が擦れ合い、痛い程充血しきっていた。
抽挿は、太さに慣らすように緩やかに繰り返される。根元までは挿入せず、途中で止めて腰を引き浅いところまで抜いていく。
抜き取られる時にたまらず追いかけるように腰を持ち上げていた。
目の前が白むほどに気持ち良い。
だが、深い絶頂には至らない。
唇を離して、顔を見た。
上気した頬と、しかめた眉間には皺ができている。
想像を絶する屈辱に耐えながら、欲情を告白したというのに、まだ焦らされるのかという不満げな表情だった。
腰を落とし、深く埋めこんでから動きを止める。
首を反らせてかすかに声を洩らす。侵入するものを狭い内壁で締め付けた。
「どうしたいか教えてくれれば、その通りにしよう」
囁くようなその声に、ひくんと太腿が小さく跳ねる。
もてあそばれ、皮膚の下に熱をはらみ続けている。それは、時間をかけてつくり変えられたせいで、羞恥を与えられても感じてしまうようだった。
ひとの肌を知らない純潔さでありながら驚くほど淫蕩になってしまっている。
淫らな自身を意識したくないのか、顔を横向けながら、わずかに口を開いた。
「……わかるだろう」
「難しいな」
未だ従順にならず意地を張る矜持には、いじらしささえある。
シャツ越しにぷくりと浮いた、両胸の突起を撫でて爪先で擦った。
「…ぅあっ……!」
それだけで太さを咥えこんだ柔らかい隘路が、ぎゅうっと締まる。胸の刺激で高められる官能を伝えてくる。
「気持ち良さそうだね」
生地の上からつまんで捏ねると、腰をベッドに沈めてうねらせる。
唇を噛んでシーツを掴み、快楽を逃がそうとするが、足先までが張り詰め感じ入っている姿は隠しようもなかった。
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