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侵犯 7

 幾度とない抽挿のはてに、その狭い穴を擦りたてる太いものが、不意に膨らんだ。  指先を食い込ませ掴まれた腰が引き寄せられる。一層に深いひだをしたたかに押し潰した。  天蓋を高く仰いで、ふーっと悦感の一端をにじませる長い吐息をついた。  頬の横につけられた唇が動く。 「ちゃんと受け止めるんだよ……アルヴァ」  そう眼前の美しい騎士の名前を呼んだ。  耳朶から脳の中までを掻き混ぜる低く甘ったるい魅力的な声音に、背筋を震えあがらせる。  ぴったりと密着する自らを抱く体温を味わった。  快楽に耽るその男の熱い息と、征服の悦びを多分に含みながら抑え込んだ声と同時に、打ち込まれた楔は解放に弾けた。  凌辱の証明のように腹の奥を汚される被虐が、もう正常に動いていない思考を愉悦で塗り潰す。  直腸奥が灼けるほど熱いものを確実に感じた。己を抱く男もまた絶頂したのだと理解し、肌が熱を帯びて内壁と腰をうごめかせ、うねらせた。 「君はもうセックスを忘れられないだろうね」  乱れたシーツの上に体を投げ出したアルヴァは、横臥して顔を合わせなかった。  自己嫌悪に苛まれ、話す気力もなく体を丸めている。 「いじめられるのも好きなようだから、あとは慣れていくだけだよ」  長身を折り曲げて、膝を抱えこんでいた。なじる言葉にも反応せず寝たふりをするように、動かずにいる。  尻からどろりと洩れてくる感覚に、ようやく身じろぎした。 「……浴場を借りたい」 「構わないが、一人にはできない」  バルドは少し考えてから、振り返る。  ベルベットのソファに横たわったまま、むにゃむにゃと口を動かす王子の隣に立っている、巨躯の従僕に視線を送った。  無言の目配せに微かなうなずきを返し、扉を開ける。  ベッドから下りたアルヴァは、股がざっくりと開き性器をも露出した、その細身のパンツの構造から覚えざるを得ないはずの違和感も無視して、毅然と姿勢を伸ばし廊下へ出た。  堂々とした歩き姿は、体を開かれていた痕跡を微塵も感じさせない。それと分かるのは、汚れた衣服だけであった。  その背を追いかける男は、バルドの含みある笑みを受け、頬を緩めた。

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