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弄ぶ 1

 バルドが指定した着替えを用意し、浴場の扉を開ける。  ドロドロに汚れた衣装をさっさと脱ぎ捨てて、湯をかぶっている影が一つ。  男はそこに近づいた。 「……手伝いましょうか」  不意に飛びこんできた声に、顔を上げる。 「いや、構わない」  口調は穏やかに、短くそう断ったアルヴァの腕を後ろから掴み、壁に押し付けようとした。  反射的に体を返して素早く振り払い、濡れた髪の間から男を睨んだ。 「何のつもりだ?」  従僕の装いの男は、にやりと口端に酷薄な笑みを乗せて、長身のアルヴァを見下ろしていた。 「散々おあずけされてるのは、こっちもそうなんだよ。いやらしく腰振って誘いやがって」  武骨だが無駄のない身のこなしから感じられる、余裕と粗削りな色気。  彼はバルドが飼っている私兵団の長であり、実際は下男などではない。  男の名はジャハムといった。 「旦那様のチンポは喜んで咥え込んでも、他の男は嫌か」  水気を含んだ従僕の装いのままの股ぐらを撫で、目の前の警戒をあらわにする一糸纏わぬ騎士を好色に眺め回した。 「喜んでなどいない!」  卑猥な嘲りの言葉に、語気を強めて声を返した。 「ここの人間を傷つければ、王子様の身の安全は保証されない。嫌って程分かってんだろう」  その脅しの言葉を吐けば抵抗しないと知っている残忍な薄い笑みを覗かせる。あらがえない者をいたぶる楽しみに歪んでいる。  アルヴァはその男を見据えながら、後ずさり壁を背に立った。 「……だから何だ」 「その尻で、俺のも慰めてほしいんだよ」  嗜虐的に笑う男を前に歯噛みした。 「断る」 「あんたにその選択肢はねえよ」  伸びてきた手を、今度は振り払わなかった。  セフェリノを人質に取られているままの状況では、アルヴァの意志など無いのだった。  昏倒させられなければ、手練であろうこの男からは逃れられない。  腕を掴んだ手の骨が軋るような強さと、色濃い欲をやどす目。  まだ情交の名残りの熱がくすぶる肌はそれに反応していた。  湿りを帯びた後孔が、空ろをうずめるものを求めるように、ひくりと蠢いた。 「背を向けろ」 「……なぜ」 「精液を掻き出してやる」  敵意の滲む視線をくれながらも、行動は従順にしかできない。言われた通りに、壁を向いた。  隠されず剥き出しの背中と尻を男にさらす。 「もっとケツを上げろ」  バルドとは決定的に異なる、その粗野な物言いがアルヴァの感情を逆撫でする。  下卑た言葉は軽蔑の調子を含んで聞こえ、行為が明確に凌辱めく。  年月をかけてつくり上げた、どこにも隙がなく引き締まった体躯も、情欲の前にはただ征服者を喜ばせる扇情的で豊満なそれにしかならない。  向けた背中を分厚い手のひらで撫でた。 「案外尻がでかいな」  笑みをふくんだ声とともに、温く堅い皮膚の感触が、腋から横腹、突き出した腰の窪みへと下ろされていく。  そして辿りついた尻肉を手のひらで包み込み、円い線をえがくそれを鷲掴むように揉みしだいた。  揶揄する言葉と、持ちものを品評するかのような執拗な手つきに、くっと喉が締まる。  ふつりと煮えた感情は、侮辱に対する憤りと似ていた。  手のひら全体で弾力のある尻肉の感触を楽しんでいる。  指を食い込ませて押し上げ、深く沈ませる。  巨躯から想定する通りの膂力は尋常ではなく、ぐにぐにと捏ねる強さは指の痕がそのままついてしまうのではないかと危惧すらした。  そんな被虐に、体の奥でぞわりと生まれるもの。  敏感で、あまりに貪欲な自己の肌に嫌悪した。

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