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弄ぶ 2
「…ぐ、ッ……!!」
不意に襲った破裂音に、背を跳ね上げた。
痛みはそれほどではなかったが、今起こったことを理解して、頭の奥がじりじりと灼けた。怒りか羞恥か区別がつかない。
再び、尻を手のひらで打たれる。びくんと腰が跳ねる。
「何をして、っ……!」
白い肌が赤く染まる。打ち据えられた部分が色付いた。
「ああ……ケツがでけえから、ついな」
今まで浴びた記憶のない、罵りに似た好色をはらむ言葉。
大きな手では、軽い動作で叩かれても殊更大きな音が響き、衝撃が骨格にまで伝わるようだった。
腰を曲げ高く突き出された、長い脚に支えられる柔らかい曲線に包まれる双丘は、深部の筋肉とそれに沿って覆う脂肪で形作られていた。
馬を自在に操る騎兵としての豊かな臀部から太腿のラインは、引き締まっているがクッションとして発達してもいた。
もっとも、誇り高いはずのそれも今は、背後の男を欲情させる締まりの良さそうないやらしい肉感としてしか映らない。
バチン、と乾いた破裂音が鳴れば体が跳ねて、太腿がかすかに震える。
眉根に深く皺を刻み、手をついている壁に頭を押し付けるのは、背後で尻を打つ男に対しての感情からではない。
嫌悪しているのは自分自身であった。
官能のような熱がじわじわと湧いてくることに気づき、ぞっとする。
「ケツ叩かれて感じてんのか」
ゆるく勃ち上がった前に触れられ、唇を噛む。
「糞ひり出した時も感じてたのか?」
そんな嘲りに、体をなかば起こして振り返り睨めつけた。
「許さない……貴様もあの男も、絶対に」
嘔吐も排泄も、バルドとこの男が拘束し強制したのだ。
身体よりも精神的に被った地獄の苦しみは、矜持を徹底的に圧し折ろうとする忌避すべき行為だった。
記憶に残したくもないのに、再び呼び起こされて臓腑が灼けつくように煮えた。
前に持っていった手で、芯を持ちはじめた陰茎を撫でさすりながら、くくっと喉で笑う。
「あれだけアンアン鳴いておいて、今更威勢よく睨まれてもなぁ」
なぐさみに尻肉を揉んでいた方の手が、軽く振り下ろされると、また白い肌に赤い痕が走る。
情交で幾度となく精を吐き出した後では、芯は持っても完全には勃たない。
やわさのある性器を握り込まれながら尻を打たれると、腹の奥でたしかに形を得る感覚。それは性感に似てもいた。
抵抗できないみじめさを噛み締める。
過敏な体が憎かった。腹立しさをどうにもできず、壁についた手を握り締める。
湯気で霞む密室に破裂音が響き、赤く染められるたびに、びくんと腰を跳ね上がらせた。
扱いていた雄芯がぬめりを帯びてくる頃に、後ろでジャハムが身じろいだ。留め金を外し衣服をずらす音。
「奥にこびり付いてる精液掻き出してやるからな」
物言いは落ち着いている。猥雑な言葉に対して平坦であった。
しかし、突き出した双丘に擦りつけられる怒張は、長く反り返り凶悪なものだと感触から察する。
さっきまでバルドに内壁を押し開かれていた時も、相当な大きさだと思ったが、今触れているものは常人離れしている。
聳えるような体格にふさわしい象徴。
腰を動かして合間にすりつけられる太さと鉄のような硬さ、ぶっくりと広がったカリの高さ。
多少慣らした程度では入らなかっただろう。
直接目にしていたら、気後れしたかもしれない。
拒否という選択ができないのだから見ない方がいいとさえ思う。
並外れた膂力も巨躯も、背後の男の持つ特徴全てで、これから行われる性交の様相を嫌というほど想像させられる。
それに怯えるべきなのか。決して屈服しないと断固として構えるべきか。
しかしまだ上気し鋭敏な腹の内側は、凌辱を悦楽に変えてしまうだろうと推察した。
程なくそれは現実になるであろう、とも。
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