まだ弛んでいる後孔に、亀頭が押し付けられる。 「欲しがってる穴にチンポめぐんでやるよ」 　そう言われ、羞恥に肌が熱を帯びる。 　今まで排泄孔だったはずの先刻不躾に拡げられたそこは、無意識の内に、まるで蹂躙を待ち望むかのようにひくひくと収縮していた。 　投げられた言葉が、ただ下劣な罵倒ではないと自己が最も理解していた。 　何と言い訳のしようもなく、情交で快楽を全身の神経に刻みつけられた証明だった。 　火照った肌は、湯の滴とともに汗がにじんで、胸や背に流れていく。 　背後の男は、双丘を片手で開いて深く沈めていった。 「……ン゛、ッ……ぐ…ぅッ……」 　熱い塊が挿入ってくる。カリ首は肉厚であまりに太い。まだ出ていない中に残ったオイルの滑りによって、痛みはないが苦しさはある。 　脚に力が籠もり、腰が反る。 　みち、と肉の環が開ききっていく感覚に息を詰めた。 「狭えな……もっと力抜け」 　ジャハムは硬さを得て剥き上げ露わになった、くびれや裏筋を指でくぐらせ撫でた。 　性感を刺激され、まだ半ばしか挿っていない亀頭を迎え入れるように収縮がゆるんだ。 　瞬間、根元まで貫かれた。 「ッ、あ゛っ……あぁ……ッ！！」 　下腹と腰がぴったりと密着した。 　太い先端から幹から根元までがずっぽりと収まり、こじ開けられる様を脳裏ではっきりと思い描いた。 　不随意にぐねぐねと絡み、嘗(ね)ぶるように隘路が包み込む。 　肩を上下させ息を弾ませる。 　呼気を長く、苦しさをやわらげるために緊張を解こうとした。 「旦那様のチンポにも、こんな風に吸いついてぎゅうぎゅう締めたのか？」 　慣らすように腰を少しずつ動かしていった。 　一度通り抜ければ、凶悪な長さと太さにも順応していく。 　さっきまで別の男の剛直を呑みこんでいた腸壁は雄を受け入れられるように変化していた。 　性交はまだ二度目であり、純潔を奪われたのはほんの数分前であるのに、この美しく逞しい騎士はもう雄をねっとりと受け入れていた。 　その粘膜の熱さは予想以上だ。 　やわらかく、みっちりと怒張を慰撫している。 　バルドが指摘したとおりに才能であろう。 　頑なな本人とは異なり、そこは肉欲に従順だった。 　尻穴の部分だけがくり抜かれた卑猥な衣服で、淫具を美味しそうに咥え込み腰を揺らす姿を、最も良い位置で見ていたのはジャハムであった。 　あれだけ煽られて、手を出すなという方が道理にかなわないだろう。 　楽しみに待ち続けていた獲物を味わい尽くす高揚感に、股ぐらのものが質量を増した。 　禁欲的な印象と、武芸に精通した者らしい完成された肉体。 　好みの男を抱けるという興奮はあるが、それ以上に敏感な肌と、雄を悦ばせる愛撫をほどこす腸壁は、中々巡りあえない気持ち良さを与えてくる。 　催淫作用のあるオイルの効果が持続しているのかもしれないが、名器と呼べる天性のそれだった。 　日々の鍛錬と実戦でさらに練り上げられた、頑強ながら靭やかに発達した筋肉は四肢のみならず全身を完璧に制御し自在に使いこなす。 　同じく戦いを稼業とするジャハムには、その肢体が努力では得られない柔軟性を有していると理解できる。 　武器を持てば、他者を寄せ付けない実力を誇るはずの戦士なのだろう。 　守護のために用いられるべき仕事道具が、今は性交に至り褒められているとは皮肉なことだ。 　だからこそ仕込みがいがある。