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第3話(雪と律の思い出話)

『カンパーイ!』 ガチャ!! みんなで声を合わせて掛け声をかけるが、斉川は相変わらず無口でグラスだけあげる。 みんな1口飲んだあと、看護師さんが口をひらいた。 「改めて挨拶しますね。私、動物看護師の斉川さくらといいます。院長の妹です。よろしくお願いします!」 「あっ、やっぱり妹さんなんですね! 俺らと年が近そうだけど、何歳ですか? 俺と雪は26です!」 「じゃあ1つ下ですかね。今年で25になりました。全然敬語使わなくていいですよ。」 さくらは屈託なく笑った。 「ホント? 助かる! 俺敬語とか苦手で」 律が助かる~と、あっさりと敬語をやめた。 「あれ? 律君は俺達にも敬語使わないの?」 倉木が、からかうように言ってきた。 「いやいや、先生達は大先輩なんで使いますよ~。ただ上手く使えなくて」 照れたように頭をかく律に、倉木が肩をぽんぽんしながら、 「冗談だよ、俺は気にしないから好きに話して。ただ和希はどうかな?」 「いやいや、斉川先生にタメ語なんて俺そんなチャレンジャーじゃないですよ」 結構本気に律が焦る。 そんな話をしてる時も、斉川は自分のペースで食べて飲んで、と会話に参加しない。 雪は会話に入りながらも、横目でチラチラ斉川の様子を観察していた。 (機嫌悪そうにはみえるけど、嫌ならこないだろうし。看護師さんが話しかけてるとポツポツと返事をしてるから、怒ってる訳ではないよね? 横に行ってこないだの事謝って、さっきの助けてくれたのお礼しても大丈夫かな?) 色々考えながら斉川を眺めてると、フイッと斉川が顔をあげて、雪の方を見た。 (やばっ! 目があっちゃった! ずっと見てたのバレてたかな?) 慌てて目を逸らしながら、平静を装う。 顔が赤くなって心臓がドキドキしてきた。 (なんで赤くなるんだよ! ますます恥ずかしいじゃないか…) 雪は誤魔化す様にビールをグイッと飲み干す。 「おい、雪あんまり強くないからそんなに飲むなよ!」 律が少し心配そうに言う。 「へ~、雪君はお酒が弱いのか~。こんな可愛い子がお酒に酔う姿は堪らないだろうね」 意味深に笑いながら倉木が言うと 「あっ、倉木先生ダメですよ、雪を口説いちゃ! こいつ、小さい頃から男女問わず言い寄られて、恋愛恐怖症ですから! いくら優しそうな倉木先生でも、ダメです」 すかさず律が、断る。 「り、律! 余計な事言わなくて大丈夫だよ!」 プーっとほっぺを膨らませながら雪が拗ねる。 「あははは、分かる分かる。雪君は可愛いもんね! しかも本人に自覚ないあざとさ」 倉木は、大笑いしながら納得したように頷く。 「大丈夫だよ、律君。俺は雪君みたいな子は観賞用だから。俺はどちらかと言うと…」 ニヤニヤ笑いながら、倉木は律に近づき耳元で囁いた。 「律君、君に興味があるな。雪君を守ろうとしてる律君が可愛いよ」 と言って、ふぅーと最後に律の耳に息を吹きかけた。 「!!!!」 律が耳を抑えながら、 「ちょっ! 先生からかわないでよ!」 珍しく律が狼狽える。 「律どうしたの?」 雪が不思議そうに言った。 「いや、なんでもないよ! 先生がからかうから」 「へー律がからかわれるの珍しいね? いつもからかう側なのに」 「へー律君はからかわれるの慣れてないんだ~」 益々ニヤニヤしながら倉木が嬉しそうな顔をする。 「あっ、雪余計な事を!」 焦る律に、 「だって律もさっき先生に余計な事言ったもん」 やり返す雪。 「2人は仲良しなんですね」 クスクス話を聞いていたさくらが、笑いながら言ってきた。 「そうなんだよね、小学6年で俺が転校してからの仲かな? 最初隣の席になってあまりにも可愛い子だったから、告白しようと思ったらまさかの男で」 思い出したように、律が笑う。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 雪と律は小学6年からの付き合いだ。親の都合で引っ越してきて、お調子者の律も少し不安だった。 (6年から転校って馴染めるやつなんかいるのか? クソッ親を恨むぜ) 文句を言いながらの初登校、隣の席に美少女がいた。 (マジで可愛い~友達になりたい! 名前はえ~っと、村田雪? 名前まで可愛いぜ!) 律は早速、 「ねえねえ、俺まだこの学校の事余りわかんないから色々教えて!」 積極的に声をかけた律に美少女は 「うん、いいよ。僕で良ければ色々聞いて」 「えっ?」 律の思考が一瞬止まった。 (えっ? 僕? 僕って言った? 女の子だよね? 流行りの僕呼びをする子なのか?) ?が律の頭にあったのがわかったのか、1人のクラスメイトが、笑いながら説明した。 「今家、ビックリすると思うけど村田は男だぜ」 「えっ? そうなの?」 ビックリした律に、 「やっぱり間違えると思った!」 「かけは俺の勝ちだな!」 クラスの男子が笑いだした。 美少女こと、雪は恥ずかしそうに下を向いている。 (こいつ、いつもこんな風に茶化されてるのか? 美人に生まれるのも大変なんだな。よし!) 「おい! お前ら俺はこいつに一目惚れしたんだ! 男でも女でも関係ない! これからこいつをからかう奴がいたら俺が相手するぞ! ちなみに俺はボクシング習ってるからな!」 シーン 律の宣言に、クラスが静まりかえり先生が、 「ハイ! おしまい。授業始めるわよ」 と、手を叩き終わらせた。 何事もなかった様に授業が始まりだした。 「今家君ありがとね、助けてくれて」 小声で雪が言ってきた。 (くそっー! やっぱ可愛いな~。いかんいかん守るって決めたんだ! 俺は今日からこいつの親友だ!) 「大丈夫だ! いつでも言ってくれ。守ってやるから」 「それからかれこれ15年近く、こんなにも守る事とは~」 うんうんと頷きながら、律が思い出話に幕を閉じた。 「はは、律君の道のりは長いね」 話を聞いて爆笑してる倉木が気になったように、 「ところでボクシングは辞めたのかい?」 まだやってたら、俺も痛い目みるのか?と心の中で思いながら聞いた。 「あ、あれはハッタリですよ! 当時俺結構身長高くていい体してたから通用すると思って」 か「そうかそうか…」 倉木は1人で胸を撫で下ろした。 「今家さん、優しんですね! 見直しました」 「えっ?ホント?じゃあ今度さくらちゃん俺とご飯…」 言い終わる前に 「ダメだ!」 珍しく大きい声で、斉川が塞いだ。 「もう、すぐダメって言う。私のそばにいる男の子、みんなに威嚇するから男友達も出来なくて」 「今までの奴はもっとダメだ」 更に追加された。 「いや、皆でですよ! 皆で! まさか斉川先生の妹さんを口説こうなんて微塵も思ってません!」 焦りながら否定する律が更に、 「ほら、雪! 先生のグラス空いてるぞ! ついで差し上げなさい!」 こちらに矛先がこないように斉川に雪を差し出した。

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