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第10話(颯太の叫び!)
「ただいまー」
「ただいまー、兄さん帰ってるの?」
玄関に颯太の靴をあるのを見て、声をかけた。
「ああ、おかえり。遅かった…なっ? ゆ、雪!? どうした! その頬のガーゼは?」
振り向いた颯太は、可愛い弟の顔にガーゼがあるのに気づき、絶叫した。
「兄さん! 大丈夫だから、落ち着いて!」
慌てて兄を落ち着かせようとしてる雪に、律が暴露した。
「アイツですよ! アイツ! 前にも話した安田の奴が、無理矢理雪にキスをしようとして、引っ掻いたんですよ!」
「り、律! 」
律の言葉に、颯太の顔に驚きから怒りの顔に変わった。
「あのやろー!今から行ってぶっ飛ばしてやる! 雪、あいつの住所教えろ!」
怒り心頭の颯太を、雪は必死で止めながら、説明する。
「兄さん、落ち着いて! 大した傷じゃないから大丈夫だよ! もう先生に、消毒もしてもらったから!」
ピタッ!
先生の言葉に、颯太は動きを止めた。
「先生って…お前の店の前にある、動物病院の先生か?」
「うん、安田さんに迫られてる時、止めに来てくれて…病院で消毒してくれたんだよ」
(雪を助けてくれたのは助かったが、その後雪の頬を消毒だと? 雪に触ったのか?その先生は?)
雪の説明に、複雑な顔をする。
雪を助けてくれたのはありがたいが、雪の頬を触った事には納得がいかなかった。
そのお陰か、安田に対する怒りが落ち着いてきた颯太は「ウッウン!」と咳払いして
「とりあえず、無事でよかった。次何か連絡きたりしたら、俺に言えよ」
と雪の頭を撫でながら言った。
納得はしてないが、これ以上雪を困らせてるのも良くないと思い、引き下がった。
「うん、わかった。僕お風呂入ってくるね」
雪が風呂に行った隙に、颯太は律につめよる。
「おい、律! その先生とやらはどんな奴だ? 雪に下心はないのか?」
律は呆れたように、颯太を見た。
「相変わらず、雪命っすね? 大丈夫だよ、颯太さん。斉川先生も倉木先生も親切だし、斉川先生は、雪の事構っては居ますが、下心っていうより犬を可愛がる感じですかね?」
うとすぎる感想の律の言葉に、颯太は納得した。
「うん、それならいんだ。それなら。律、怪しい素振りを出したらすぐ言うんだそ!」
「颯太さん、怪しいってなんですか? 雪が明らかに嫌がってるなら、俺が止めますよ?」
呆れたように、律が笑う。
「雪も斉川先生には打ち解けてるから、大丈夫ですって。無理強いすると雪に怒られますよ? 本気で怒らせたら、怖いの颯太さんも知ってるでしょ? たくー、颯太さんも早く弟離れして、彼女作ればいいじゃないっすか?」
最もな事を言われてしまった颯太は、吃る。
「い、いいんだよ俺の事は。それに、俺はモテないから彼女なんて出来ないんし、雪の幸せが優先だ」
自分のイケメン度に気づいてない颯太は、彼女が出来ない事をモテないと決めつけていた。
(いや、颯太さんはかなりの美形なのに、性格が残念すぎるからだろ)
律は声には出さず、呆れていた。
「律、お風呂出たから使っていいよ」
「おう!入るわ!」
付き合ってられないと、律もそそくさと風呂に行った。
部屋に入ると、雪はプリンを抱っこしながら携帯を開く。
「先生にLINEしなくちゃ。なんて送ろう? 」
(お疲れ様です。今日は色々ありがとうございます。さっき帰ってきてお風呂に入って一息つきました。先生のお仕事邪魔してすいません。今度改めてお礼します。お休みなさい)
一度打ってみて、手を止める。
(うーん、お風呂とかいるかな? 堅苦しいかな? でも絵文字とか入れる感じでもないし…)
一度打っては消しを繰り返し、ようやく決まる。
(今日は色々ありがとうございます。無事に帰りました。お仕事の邪魔して、すいません。頑張って下さい)
と打った。
(ふー、LINE1つで疲れちゃうや)
よし!と、ひと仕事終えたかのように一息ついた所に、ピロピローと、携帯が鳴る。
除くと斉川からだ。
(えっ? えっー? 先生から電話来ちゃった!)
アセアセしながら「は、はい」と出た。
「帰ってきたか? 連絡が遅いから心配したぞ」
少し怒ったような口調で言う斉川に慌て説明した。
「す、すいません。体が気持ち悪かったから、先にお風呂に入ってました…」
「そっか、わかった。あと全然迷惑かけてないから気にするな。ゆっくり休め。ちゃんと、ガーゼ取り替えろよ? 」
「じゃあな」と言って、斉川は電話を切った。
(ビックリしたー!先生そんなに心配してくれてたんだ。先に連絡入れとけばよかった…)
雪は驚きながら、切られた後も携帯をながめていた。
(先生って、無愛想な顔してるから、最初は怖かったけど、話すととっても優しい人なんだなー。あんな素敵な先生に気にかけてもらえて、少し嬉しいかも)
雪は今日の事を思い返しながら、布団にプリンと入り眠りについた。
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