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第13話(無自覚な律)
「律、今日は帰って来てくれてありがとう。仕事忙しいのに、ごめんね」
律の母親は自分の誕生日に、忙しい息子が、帰って来てくれて嬉しそうだ。
「全然大丈夫、雪もいるし。母さんの誕生日なんだからワガママ言ってくれて平気だぜ」
皿を片付けながら、親孝行アピールをしている。
「それに母さんの料理食べれるし」
「もう、本当にあんたは食べ物ばっかり。良く太らないわね?」
「訓練で、色んな犬と散歩してるからな」
余裕だよ! とお腹をポンと叩く。
「もう、26になっても子供なんだから。彼女はいないの?」
母親の問いかけに、律の頭に倉木の顔がよぎった。
(ないない! なんで翔さんが出てくる? 違う違う! 翔さんなら彼女じゃなくて彼氏だし! いや、突っ込む所はそこじゃない!)
頭の上を手でパタパタして、慌ててる息子を不思議そうに見ながら、
「あんた、何やってんの?もう遅いしお風呂入って来なさい」
「あ、ああ。俺酔ったのかな? 風呂入ってくるわ」
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「あ~疲れたー。和希の奴いつもやらないからって色々押し付けやがって」
倉木は1人でブツブツ言いながら片付けをしている。
斉川は雪とご飯、さくらも先に帰ってしまった。
「和希いいなー俺も律に会いたいよー」
2日に1回は会ってるのにもう寂しい倉木は携帯を眺めている。
「もう、ご飯たべたかな? お母さんの誕生日だから邪魔しちゃ悪いけど、もう電話してもいいかな?」
時計を見ながら1人でイジイジしている。
「よし、9時だ! もういいだろ!」
自分で納得して律にテレビ電話をかける。
ツツツツ、ツツツツ、
「あれ?翔さんテレビ電話っすか?」
「律ーもう誕生日会は終わったかい? あれ? 髪濡れてる?」
「そうっすよ。俺今風呂入ってて、ちょっと待って下さいね」
そう言って、律は携帯を机の家に置いてタオルで髪をふきだした。
携帯の画面越しに、律の上半身が映る。細身ではあるが、程よくついた筋肉にお風呂上がりの火照った体。
倉木はその姿に釘付けになり、ゴクッと唾を飲み込む。
(律、その姿はヤバいだろ。その色気はどこからくるんだ)
倉木のソレは、少しずつ大きくなっていく。
「翔さん、お待たせ」
上半身裸のままベッドに座り話し出す。
(裸にベッドって、律わざとか?)
「翔さん? 仕事終わりましたか?」
「あ、ああ。一息ついたから連絡したんだ。楽しかったかい?」
冷静に心を落ち着かせてながら話す。
「うん、終わったよ。久しぶりに食べる母さんのご飯はやっぱりいいね!」
無邪気に答える律はやっぱり可愛いと思いながら、うんうんと頷く。
「律ー、ちょっと来て!」
後ろで母親の声が聞こえた。
「ちょっと待って、今行く! 翔さん、ごめんね!ちょっと行ってくる」
「うん、大丈夫だ、またね」
電話を切った倉木はホッとした。
「やばかったー顔に出る所だった! 律の奴、無自覚だから恐ろしいな!」
収まりそうにない自分のを眺め肩を落とす。
(久しぶりに1人でしますか…)
(ハァ…律…いつか君と…ハァ…ハァ…アッ…)
律の悶える姿を想像しながら自分のを握りしめる。
「おい、翔! いるか?」
雪を送った斉川が戻ってきた。
(おいー! なんでこのタイミングで帰ってくるんだよ!)
慌ててズボンを履いてると斉川がガラッと扉を開けてきた。
「お前、ズボン脱いで何してんだ?」
怪訝な顔の斉川に、
「もう、帰って来るの早いよ! もっと雪君とゆっくりしなよ! 中途半端じゃないか!」
「何がだよ?」
「1人でゆっくり抜こうと思ったのに、帰ってきやがって」
完全に八つ当たりだ。
倉木の言葉に斉川は絶句した。
「ぬ、抜くって、お前なんで病院でするんだよ! 家に帰ってやれよ!」
「仕方ないだろ! 律とテレビ電話したらあいつが裸で登場したから、興奮したんだよ!」
「律って、今家の事か? お前今家が好きなのか?」
珍しくビックリした顔で斉川が聞いた。
「逆に気づかないのお前位だよ! さくらちゃん絶対気づいてるよ! 雪君も薄々きづいてそうだし」
「お前、今家と付き合ってるのか?」
「ううん、完全に俺の片思いだね。律も気づいてないよ、俺の事兄の様に思ってるしな」
「あいつ、男だぜ?お前今まで女としか付き合って無かったはずだが、男もいけるのか?」
「失礼な言い方だなー。好きになれば性別なんて気にならないよ。男が好きじゃなくて律が好きなの!」
「お前凄いな。そうゆう考え方もあるのか?」
「おっ、珍しく俺に感心してるな? 和希だって最近雪君と仲良いじゃん! 好きとかはないのか?」
倉木に質問されて、斉川はドキッとした。
さっきちょうど考えていた事を指摘されたからだ。
「俺は好きとかはよくわからん。ただ雪が笑うと嬉しいとは思うけどな」
素直に自分の気持ちを話す。
「それは気にしてる証拠だぜ? まだ好きとか分からないなら、自分の気持ちに正直になりな。焦る必要はないよ」
倉木が、斉川の気持ちに寄り添いながら語る。
「お前、有難いが、その姿で言われても説得力ないぞ」
斉川は倉木の下半身を指差しながら呆れたように、
「まだ収まらないのか?」
「俺の律への思いは強いんだ!ちょっとトイレに行ってくる」
アホみたいな自慢をしながら倉木はトイレに行った。
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