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第15話(さくらの告白)
「ねえねえお兄ちゃん。話があるんだけど…」
みんなのご飯から帰ってきて、さくらと斉川はリビングでくつろいでる。
「なんだ?改まって」
「私、颯太さんが好きになっちゃったかも!」
「ブフォ!! 」
斉川が飲みかけの水にむせた。
「ゲッホゲッホ! おい! なんだって?」
びっくりしすぎて、しばらく咳き込んだあと、さくらに尋ねた。
「雪の兄の事か?」
「うん、あんな素朴で自分の事モテないとか本気で思ってて、雪さんに対する愛も素敵でいいなーと思ったの」
斉川は唖然とした顔で、妹の顔をマジマジと見る。
「お前、本気か? 今日会ったばっかりだろ?」
「でも、前からお兄さんの話は雪さんから聞いてたし、実際会っても素敵だったんだもん」
「だもんって、だからお前、連絡先交換したのか?」
「うん、雪さんの情報いち早く教えます! って言ってね!」
さくらの行動の速さに呆れた斉川だったが、
「でも、雪には優しくても女にはろくでなしかも…」
と言いかけた言葉を、さくらの睨みで止めた。
「今までの人達はどんな人も、お友達でトキメクとか無かったからお兄ちゃんが何を言おうと気にしなかったけど、今回はダメよ! 邪魔したら本気でお兄ちゃんと口聞いてあげないからね! 黙って応援してね!」
半ば脅しの様な言い方をされて、流石の斉川も黙ってしまった。
「さーて、お風呂にでも入ろっかな」
言いたい事を言って満足気なさくらは、鼻歌を歌いながら風呂場に消えて行った。
(さくらの奴、大丈夫か? でも口出すと怒るし、雪の兄だし…)
ハァーと深いため息をつくしか無かった斉川である。
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一方こちらも…
「なあ雪、さくらさんってどんな子なんだ?」
「珍しいね? 兄さんが女の人の事聞くなんて?」
「確かに、今まで自分から女の子の話題出した事ないっすよね?」
こちらもご飯後リビングでダラダラしてる3人。
「いや、いつも女の人と話すとみんなすぐ怪訝な顔して離れるのに、さくらさんはずっとニコニコして横に居てくれたから、不思議で…」
「いや、それは颯太さんが雪の話ばっかするからでしょ? そりゃ女の子は私に興味がないのねって諦めますよ!」
「そうだよ、兄さん。僕の話ばかりじゃなくて自分の話もしなきゃ!」
「だってその人に興味がないし、弟さんいるんですね? って聞いてくるから…」
「そんなの、颯太さんと話すキッカケ作る為でしょ? 真に受けてひたすら雪の話したら嫌われますよ!全く、本当にこの兄弟は恋愛に恐怖心がありすぎ!」
律は呆れてしまった。
「雪は仕方ないけど、颯太さん、この際さくらちゃんに免疫つけてもらいなよ! あの子周りに変な人多いから免疫あるし」
「こら、律!先生達を変人扱いしないの!」
「悪い、悪い! イヤ、俺はあの人達好きだよ? 個性的だし。雪も好きだろ?」
律の好きに故意はないのはわかってても、急に聞かれると雪はドギマギしてしまった。
「す、好きだけど…」
「なっ? 颯太さん頑張って下さい。これを機会にさくらちゃんと仲良くしたら? あの子本当にいい子だし、兄は怖いど」
「でも律、前はさくらちゃん、さくらちゃんって言ってたのに恋愛感情はもうないの?」
雪が不思議そうに聞いた。
「うーん。凄く可愛いと思うけど、いい子だし遊ぶって感じでもないしなー。ああゆう子は俺みたいなのより颯太さんみたいな真面目な人が似合うよ。それに今は翔さんと遊んでる方が楽しいし」
「律ーそれって倉木先生にラブって言ってるようなもんだよ」
ニヤニヤしながら律をからかう。
「うるさいな! それ以上言うと雪も質問攻めするぞ!」
うっ! それは困ると雪は口をバツにする。
「わかった! 黙るよ。でも律のする事にはいつも応援してるからね」
「わかってるよ、じゃあおやすみ」
律が自分の部屋に入ると、颯太が気になる事を雪に聞いてきた。
「雪、律はその倉木先生の事が好きなのか? その…恋愛として?」
「うーん、まだわからないんだ。でも珍しく深く仲良くしてるみたいだし、律はいつも深入りしないのに」
でも、それも僕のせいだよね…と落ち込む雪に、颯太は優しく肩を抱きながら、
「大丈夫だよ。律はお前を責めたりなんかしてないだろ? 本人も納得してやってきてるんだ。そのうち律の事をわかってくれて、本気で好きになってくれる人が現れるよ。その時は相手が誰でも応援してあげような?」
「うん、僕、絶対律には幸せになってもらいたいし! 兄さんもだよ?」
「わかってるよ、さくらさんに連絡してみるよ」
「うん、頑張ってね」
こちらは少々斉川兄妹とは違って穏やかなまとまりだ。
各々の思いを馳せながら夜が更けていく。
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