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第17話(待ち合わせ)

待ち合わせ当日、雪は少し早く着いた。 (まだ、あと15分あるかー、緊張してきたな…僕の服大丈夫かな?) 最近律以外と余り出かけないから、余りオシャレをしない雪だった。 (もうちょっと先なら服買えたのに…せっかく先生とのお出かけ…) ショーウィンドウで自分の姿を見てため息をついていると、 「ねえねえ、君待ち合わせ?」 急に後ろから声をかけられてビックリして振り向いた。 「うわっ! すっげー可愛い!」 「あれ? 君女の子? もしかして男の子なの? 」 声をかけてきた2人組の男は、女の子だと思って声をかけたようだ。 「女の子かと思って声かけたけど、男だったんだな、でもめちゃくちゃ可愛いな?」 「ああ、ここまで可愛いともはやどっちでもいいな」 2人の男は、雪をジロジロ見ながら好きかって言い出した。 「あの…人を待ってるんで…」 雪は断ってどこかに行ってもらおうと思ったが、 「声も可愛いね? 友達は女の子? なら一緒に遊びに行こうよ! 俺ら暇しててさー」 空気の読めない男①が馴れ馴れしく話しかける。 「いいねー、ダブルデートしようよ! 俺は君でいいからさ!」 そう言いながら、男②が雪の肩に手をかけた。 「あの、本当に困ります…」 (困ったなー、別の場所に移動した方がいいかな? でも先生来たら僕がいないと思うし…) 雪はとりあえず場所を移動しようか考えていたら、急に肩に置かれていた手がどかれた。 (あれ? 軽くなった?) 「いや、俺らは別に何も…」 「そうそう、ちょっと可愛い子が居たから、声かけただけで…」 男2人は、雪の後ろを見ながら後ずさっていた。 雪は不思議に思い後ろを振り向くと、斉川がいた。 「あっ、先生」 鬼の形相の様な険しい顔の斉川は、 「俺の連れに何か用か?」 凄みをきかしながら、2人を睨みつける。 『いや、ほんとに、すいません!』 後ずさりながら、2人は謝って走って逃げて行った。 斉川は、その後ろ姿を見ながら、チッと舌打ちをする。 「先生、すいません」 雪がまた、申し訳なさそうな顔をして謝る。 「雪が謝る必要はない。遅くなって悪かったな」 斉川は雪の頭をポンポンした。 雪は自分で解決出来ず、斉川に迷惑かけてしまったと思っていた。 (やっぱり僕、先生に嫌われるのが怖いんだな…) 雪は自分の気持ちが少しずつ変化してるのに気づいてきた。 斉川は雪のシュンとしている顔を見て、少し目線を下げて、ゆっくり話しかけた。 「雪、俺は自分に怒っていて、雪には怒ってないからな? 俺が遅れたせいで、雪が絡まれてるのを助けるのが遅くなった事に怒ってるんだ。俺がもっと早く着いてれば、雪に嫌な思いをしなくて済んだのにって…」 斉川は雪を傷つけない様に、優しく語りかけた。 (先生はそんな事思ってたんだ?) 雪は斉川の思いにビックリした。てっきり、会う度に絡まれてる自分を助けるのに、もううんざりしてるのかと思っていたのだ。 嬉しくなった雪は張っていた気が緩み、自然に涙が出てきた。 「おい、どうした? 怖かったか? 」 首を振る雪に、斉川は優しく涙を拭いてあげる。 それと同時に自分の今までの感情に理由がついた。 (俺は雪が好きなんだな、だから誰にも触られたくないのか…) 涙を拭きながら、斉川は自分の気持ちに確信をした。 「すいません、もう大丈夫です」 笑顔を見せる雪の頭をポンポンと撫でながら、斉川も笑顔を見せる。 「さっ、泣き止んだなら買い物行くか。さくらが今度誕生日だから、香水をねだられたんだが、さっぱりわからんから選ぶの手伝ってくれ」 「さくらちゃん、誕生日なんですね? もちろん喜んでお手伝いします。僕も何かあげなきゃ!」 雪は気を取り直して、笑顔で答えた。 その笑顔を見て斉川も微笑んだ。 __________________ (ヤッベー、寝すぎた!) 律は走りながら、待ち合わせ場所に急ぐ。 (翔さん、絶対早く着いてそうだもんな!) いつも遅れる律を倉木はニコニコ待っててくれる。 (翔さん、彼女甘やかすって言ってたけど、俺でこれなら彼女はどんだけ甘やかされてるんだ?) 走りながら色々考える律だった。 「ハァハァ…着いた! よし、2分前!」 何とか遅刻はせずに済んだ、律は倉木を探す。 「あれ? あの女の子に囲まれてるのって翔さんか?」 3人の女の子に囲まれてニコニコ話してる倉木がいた。 (翔さん楽しそうだなーやっぱ男といるより女の子といる方が嬉しいのかな?) チクッと律の胸が痛んだ。 (なんだよ、俺。なんで翔さんが女の子といるのを見て寂しくなってるんだ?) 律は自分の気持ちが分からず、1人でモヤモヤしていた。 「あっ、律ー!」 倉木が律に気づき、嬉しそうに手を振る。 律も急いで倉木の所に行く。 「すいません、遅れて…」 「大丈夫だよ、今日はピッタリじゃないか」 遅刻じゃないよと、倉木が言う。 「あのー、お兄さんの待ち合わせの相手ってこの人なんですか?」 今まで倉木と話していた女の子がら凄く不思議そうに話しかけてきた。 「そうだよ、さっき言った子だよ」 「そ、そうなんですね、じゃあ私達はこれで…」 3人の女の子達は、そう言ってそそくさとその場を去って行った。 「なんだ? あの子達? 翔さんの知り合いじゃあないの?」 「ああ、さっき声かけられてね、一緒に遊びませんか? って」 「えっ? じゃあなんで俺が来て帰ったの? 俺許容範囲外なのか?」 俺はそんなかっこ悪いのか? と納得出来ない律だった。 その様子を見て、倉木が笑いながら、 「違うよ、彼女達がしつこかったから、これから好きな子とデートだからって言ったんだよね。だから、律が現れたから驚いたんじゃない?」 倉木の言葉に律は唖然とした。 「ちょっ、翔さん、俺を使って断らないでよ! なんだよそれ?」 動揺を隠せない律に、 「使ってないよ、本当の事だし。さっ、律の好きなアーティストのCD買いに行こ!」 しれっと告白をした倉木にビックリしながらも、いつもの冗談だと思った律は、それ以上の追求は止めて大人しくついて行く。 (本当に翔さんは、読めないな! なんだよ好きって? 冗談キツイぜ!)

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