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第18話(斉川と雪)
「先生、この香り凄くいい匂いですよ?」
「ああ、確かに、じゃあこれで」
「もう、先生どれもいいって言うから! ちゃんとさくらちゃんに合うの探しましょ?」
「なんでもいいよ、俺はわからん」
斉川は既に面倒くさくなっていた。
「さくらちゃん、どんな香りが好きとか知らないんですか?」
「仕事柄、香水つけないからな」
斉川はうーんと、腕組みをしながら本気で悩み出した。
「じゃあ、さくらちゃん甘い物とか好きですか?」
「そうだな、ケーキとかは、良く食べてるぞ」
「じゃあ、甘い系で探してみましょ?」
「なんでもいいぞ?」
雪に任せっきりの斉川は、大人しく雪の後を着いていく。
「あっ、この香り凄くいい匂いですよ? 」
ピーチの香りの香水を見つけた、雪は嬉しそうに報告する。
「うん?うん、いい匂いだ。これにするよ」
「もう、先生全部同じじゃないですか?でも、これは凄くいい匂いだから、いいと思いますよ」
雪は満足して、香水を斉川に渡した。
「じゃあ、会計してくる。少し待っててくれ」
「はい、行ってらっしゃい」
雪は待っている間に、自分もさくらにプレゼントしようと思い、色々見て回った。
(何がいいかな? 余り女の子にプレゼントした事ないから、意外に迷うなー。香水とかジャンルが決められてると簡単だけどなー)
改めて、いっぱいある商品を見てると何がいいか、全然分からない雪だった。
(うーん、女の子だから、アクセサリーとか? でも恋人じゃない僕があげるのおかしいし、高いとさくらちゃんに気を使わせるし…)
色々見てると、ブレスレットの横にミサンガのコーナーがあった。
(ミサンガか! これなら値段もお手頃だし、足にも付けられるから仕事の邪魔にならないかな?)
ピンクと白の可愛いミサンガを手に取り眺めた。
(うん、チャームもついてて可愛い! さくらちゃんに似合いそう)
決めた! と手に取りレジに行こうとしたら、すぐ横にあるメンズ用ミサンガを見つけた。
(うわー、この赤と白のミサンガいいなー)
雪はミサンガを手に取り見ていると、隣のミサンガが目に入る。
(あっ、こっちのブラックとグレーのミサンガ先生に似合いそう!)
斉川に似合いそうなミサンガを見つけた。
(先生に、似合いそうだけど、何もない時に僕が買うとか変だよね? 僕とお揃いも嫌だろうし…自分のだけ買うか?…でも、さくらちゃんとお揃いみたいだし、悪しな…)
両手に赤と白のミサンガ、ブラックのミサンガを持ち悩んでると、斉川が戻ってきた。
「雪、待たせたな! ん? 雪も何か買うのか? 」
「あっ、いや、このピンクのミサンガを買おうかと! さくらちゃんに似合いそうで」
慌ててメンズ用のミサンガを置き、ピンクのミサンガを見せた。
「いいんじゃないか? 桜色だな」
「ですよね! じゃあ僕も買ってきますね!」
雪は急いでレジに向かった。
(あー恥ずかし! 先生、変に思ってないよね? )
ピンクのミサンガをプレゼント用にしてもらい、斉川の所に戻った。
「先生、お待たせしました」
「ああ、そろそろ昼だから、ご飯でも食べるか?」
「そうですね、僕もお腹空きました」
「雪は何が食べたい?」
「僕ですか? なんでも大丈夫ですよ、好き嫌いないので」
「俺はエビ以外なら大丈夫だ」
「先生、エビ食べれないんですか? アレルギーとか?」
「いや、形が嫌いだ」
意外な答えに、雪は笑ってしまった。
「先生、子供みたいですね!」
クスクス笑う雪に、斉川はいい加減にしろと、頭をクシャクシャした。
(先生、可愛い所もあるんだ! なんか嬉しいな)
雪は斉川の事を色々知れて嬉しくなった。
「じゃあ、パスタにしますか? 僕あそこのクリームパスタが好きで」
「ああ、エビがなければなんでもいい」
「じゃあ、入りますか?」
「先に入って席取っといてくれるか? トイレに行ってくる」
「はい、分かりました」
雪は先に入って、席に着いた。
(今日は先生の事色々知れて楽しかったな。やっぱり僕、先生といると嬉しくなる…これって好きなのかな? いや、好きは好きなんだけど、兄さんや律みたいな好きと違うし…触られると嬉しくなるし、ドキドキするんだよな…)
斉川が戻ってくる間、色々考える雪。
「待たせたな、もう注文したか?」
斉川が戻ってきて、雪の前に座る。
「まだです、僕は決まってるので、先生どうぞ」
「そうか、じゃあ俺はこれで」
注文をして落ち着くと斉川が、
「雪、前から思ってたが、その先生呼びは止めてくれないか? 外だとなんの先生かジロジロ見られるからな」
(先生が見られるのは、先生ってだけでなくカッコよすぎる外見のせいでもあると思うけど…)
雪の展開は当たりだが、それに追加して雪が横を歩いてると余りにも高難度のビジュアル2人なので、注目の的であった。
「じゃあ、斉川さん? でいいですか?」
「なんでそんな、他人行儀な呼び方なんだ? 和希でいい」
「か、和希さん?」
名前で呼ぶのが恥ずかしい雪は赤くなりながら呼んだ。
「それでいい」
雪の赤い顔を満足そうに眺めながら斉川が頷く。
「そういえば、先…か、和希さん、僕に聞きたい事ってなんですか?」
本来の目的を思い出した雪は改めて斉川に聞いた。
「ああ、雪の兄さんについてな…」
珍しく斉川が言い淀む。
「兄さん? がどうしました?」
「いや、実はさくらの奴がお前の兄さんを…気にいったらしくてな…別に雪の兄を疑ってる訳じゃないが、どんな男か知りたくてな」
「えっ?? さくらちゃんが兄さんを?」
雪はビックリした。
兄が気にしてたのは知っていたが、まさかさくらも兄を気にいってるとは思わなかったのだ。
「すまんな、驚かせて」
「あ、違います! 兄さんもさくらちゃんを気にしてたので、さくらちゃんもだってのが意外で」
「えっ? アイツが?…いや、雪の兄さんもさくらを気にいったのか?」
「はい…珍しく女の子に興味を示したので僕は応援してあげたいのですが…」
斉川が複雑な表情をしてるので、雪は申し訳なさそうに言った。
「兄さんは本当に優しくて、絶対さくらちゃんに酷い事はしないですよ!」
雪は斉川の気持ちもわかるが、一生懸命颯太をアピールする。
「わかったわかった、大丈夫だ。少し心の準備が必要だが、雪の兄だし、悪い人じゃないのは知ってる。…さくらに伝えとくよ」
はぁーとため息をついて斉川は諦めた。
(本当に先生はさくらちゃんの事になると人が変わるなー)
クスクス笑う雪に、
「こら、笑うな」
斉川は、雪のおでこをコツンとついた。
「ふふ、すいません。なんか嬉しくて。色んな、和希さん見れたので」
「たくっ」
雪の素直な発言に優しく微笑みながら、雪の頭をなでなでする。
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