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第21話(雪と律のモヤモヤ…)

ガチャ! 「ただいまー、雪いる…あー!! お、おい、お前らなにしてるんだ!?」 タイミングよく颯太が帰って来た。 「に、兄さん! な、何でもないよ!」 慌てて起き上がる。 「な、何でもない訳あるかー! お前、今雪に何をしようとした?」 颯太は斉川に詰め寄る。 「チッ」 「お前、今舌打ちしたな?」 「してない」 「イヤイヤ、今絶対しただろ? 邪魔しやがって的な?」 「分かってるなら、邪魔するな」 「お、お前…」 斉川の悪びれない態度に呆気にとられる。 「雪、俺は帰るな!また連絡するよ」 「あっ、はい。気をつけて下さい」 「雪! そんな奴に気を使うな!」 まだ、プリプリ怒っている颯太に、斉川が少し意地悪そうに、言ってやる。 「あっ、そうだ。さくらが連絡欲しいって言ってたぞ」 「うっ…」 さくらの話を出されて、颯太は黙ってしまった。 「じゃあな、雪」 そう言って斉川は、帰って行った。 「雪ー、お前今、斉川の奴にキスされそうになって無かったのか? ソファで2人で何やってたんだよー」 違うと言ってくれて、と言わんばかりに雪に訴えかける。 「ち、違うよ! 僕がバランスを崩して、ソファに倒れちゃったから、和希さんが起こしてくれようとしたんだよ」 苦しい言い訳をする雪に、 「お前、あいつの事、和希って呼んでんのか?」 颯太は益々悲しい顔になってしまった。 ガシッ!! 急に、雪の肩を両手で掴み、 「雪、お前は斉川の事が好きなのか?」 「う、うん…」 真剣に聞いてくる兄に思わず言ってしまった。 「あー!」 薄々思っていたが、直接聞いてしまい雪の足元に崩れ落ちた。 「そうか、そうか、あいつが好きなのか…」 「に、兄さん、起きてよ」 雪は兄を立たせて、ソファに座らせた。 颯太の手を握りながら、説明をした。 「僕ね、今まで強引に来る人ばかりで、恋愛は怖いと思ってたの。でも、和希さんは僕に凄く優しくて、助けてくれたりして、兄さんや律にも助けてもらってたけど、その時の気持ちとは全然違うって気づいたの…」 「あいつもお前が好きなのか?」 「そ、それはわかんないけど…同じ気持ちなら嬉しいとは思ってる…」 「いや、どう考えても好きだろ? あー聞きたくない」 はぁーとため息をつく。 「雪、お前が真剣に誰かを好きになるのは嬉しいよ。あいつは偉そうで嫌だけど、応援するよ」 全然応援したくないような顔で、颯太が言った。 「兄さん、ありがとう! 兄さんもさくらちゃん頑張って」 「うっ…うん、連絡しなきゃな」 女の子に自分から連絡するのは、相当な勇気がいる颯太だった。 ガチャ! 「律、おかえり! どうしたの?」 入ってきた律の顔は暗く、酷く具合が悪そうに見えた。 「何でもないよ…疲れたから休むわ」 「うん…」 自分の部屋に入って行った律を見て、 「律は今日、倉木先生と出かけたんだろ? ケンカでもしたのか?」 「どうしたんだろう? 後で部屋を覗いてみるね」 雪は心配そうに律の部屋のドアを眺めた。 __________________ トントントン 「…」 トントントン 「律、入るよ」 返事が無かったが、雪は気にせず律の部屋に入った。 「律、お風呂入りなよ。僕もう入ったから」 律はベッドの上で毛布にくるまってる。 「律、どうしたの? 具合悪いなら薬持ってこようか?」 「大丈夫…」 フルフルと横に顔を振る律を見て、雪は律の隣に座った。 「律…言いたくないなら話さなくていいけど、僕も兄さんも心配してるよ。倉木先生とケンカでもした?」 「ううん」 そう言って、また黙ってしまった。 雪は無理をさせないように、何も言わず律の横に寄り添った。 しばらくして、律がポツリポツリと話し出した。 「今日、翔さんと買い物してたんだけど…」 律は、今日起こった出来事を雪に話した。 「俺…翔さんに告白されて何も言えなかった…翔さんの事は好きだけど、恋愛でとか考えた事なくて…。でも、他の女の子と話してるの見て、ムカついたのは事実だから…好きなのかも? とも思ったけど、それを言うと今までの関係じゃあ居られなくなるのも嫌で…」 ハァとため息をついて頭をガシガシとかく。 「クッソ! グチグチ悩むなんて俺らしくないのに! 雪、どうしたらいい?」 律は自分で悩むのを放棄して、雪に尋ねた。 「流石に、僕は律じゃないから、こうしたらいいとかは言えないよ? ただ、倉木先生が本気なら、律も本気で考えて、返事をするのがいいんじゃないの? 僕は律が出した答えなら、尊重するよ」 と、雪は自分なりに考えて言った。 「…そうだよな。 やっぱり考えなきゃ駄目だよな? ハァー、ちゃんと考えてみるよ」 「うん、いつでも話は聞くから言ってね」 「雪、ありがとな」 律は雪の肩を抱いて、感謝した。雪も律の肩に頭を乗せ頷いた。 (やっぱり、律と和希さんは違うなー) 「おい! 何が違うって? お前今、和希さんとか言ったか?」 思わず声に出てたらしく、律に突っ込まれた。 「えっ? 声出てた?」 狼狽える雪に、 「そういえば、翔さんの事ばかり気にしてて、スルーしてたけど、さっき颯太さんが、雪と斉川先生の事何か言ってたよな?」 「なんだったんだよ? 」と雪に詰め寄る律。 「いや、あの…実は…」 今度は雪が、今日の出来事を律に話した。 「いや…マジか? えっ、それはやっぱりキスしようとしたんじゃ? 」 「そうなのかな? でも、怖くて聞けなくて…」 「まぁ聞いて、イヤイヤすぐ横の物取ろうとしただけだし、とか言われたら凹むわな」 「だよね? 僕もあれは勘違いなのかと思い出してきたよ…」 「でも雪は、もう自分の気持ちに確信が持てたんだな? 」 「…うん」 「そっか…俺も考えなきゃな…」 律は倉木の事でモヤモヤ、雪は今日の出来事がなんだったのかでモヤモヤ…。 2人は仲良くモヤモヤしながら夜を過ごした。

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