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第22話(斉川と倉木の思い…)
次の日の朝…
「雪、あれから斉川先生に連絡したのか?」
歩きながら、律が聞いてくる。
「ううん、気まずくて何てLINEすればいいかわかんなくて…」
「そうだよなー、俺も翔さんに連絡してないんだよな…考えがまとまらなくて…」
「律はゆっくり考えるのでいいんじゃないの? まだ、まとまってないんでしょ? 」
「ああ…」
ハァーとため息をつく。
「どうしたんですか? 朝からため息なんて? 」
KS動物病院の中からさくらが出てきた。
「さ、さくらちゃん! 早いね? 」
「こんなに早くどうしたの? 」
2人は斉川と倉木に会うのを避けるため、いつもより早く家を出たのだった。
慌てた様に言う2人にさくらは怪訝な顔をしながら、
「私が早く来てると、そんなにまずいんですか? やる事があったから早めに来ただけですけど? 」
「そ、そんな事ないよ! 仕事熱心だなーと思って! な、な? 雪もそう思うよな? 」
「うんうん! 」
雪も激しく頷く。
「なんか2人とも今日はおかしいですね? 」
「あ、あのーちなみに先生達は? 」
「まだですよ? 何か用事でもありましたか? 」
「ないない! ぜっんぜっんないよ! な、雪? 」
「う、うん! ないない! 」
「えー? 本当に何か変ですよ? 怪しいなー? 」
「そんな、さくらちゃんの考えすぎだよ! 」
「そうかなー? あっ、お兄ちゃんと翔さん! 」
さくらは雪と律の後ろに斉川と倉木が歩いて来るのを見つけて声をかけた。
ビクッ!!
さくらの声に雪と律は背筋が伸びる。
「ああ」
「おはよう」
斉川はいつも通り、倉木はややぎこちない挨拶をした。
「お、おはようございます! 俺ら仕事があるんでお先に! な、な? 雪? 」
「あ、うん。 そうだね! じゃあ失礼します! 」
そう言って、雪と律は走って横断歩道を渡って行った。
その様子をポカンと見ていたさくらが、おもむろに振り向き、
「ちょっと! お兄ちゃんと翔さん! 雪さんと律さんに何したの? 2人とも怯えてるじゃない! 正直に話さないと、怒るわよ! 」
自分の知らない所で、何かあった事にプンプンしているさくらだった。
「昨日、雪にキスしようとした」
「昨日、律に告白した」
2人同時に答えたが、お互い驚いて顔を見合わせる。
「え、え、えー??ちょっと何それ? 聞いてないわよ! 」
1番驚いてるのはさくらだ。自分の知らない所で何があったのか!
『今言った』
2人同時にそう言うと、さくらに怒られないよう、そそくさと病院の中に逃げて行った。
「あっ! お兄ちゃん? 待ってよ、もう! 」
(何何? 急になんで進展があったの? もうー気になる! 後で絶対聞き出してやるんだから! )
絶対逃がさない! とさくらは心に決めて仕事に戻るのだった。
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「小林さん、こちらがメロンちゃんのお薬ですね。1日2回、1回に1錠ですね」
「はい、ありがとう。…ねえねえ看護士さん! 」
「はい? 」
「今日、先生達おかしくない? 」
「えっ? 」
「斉川先生は相変わらずだけど、いつもより上の空だし、翔先生なんて全然おしゃべりしてくれなくて」
「そ、そうでしたか。 すいません、昨日仕事が遅く少し疲れてるのかもしれません。ご迷惑お掛けしました」
(もう! 2人ともちゃんとしてよね! )
事情を知ってるさくらは患者にバレないように取り繕う。
「全然大丈夫よ。 やっぱり疲れてるのね、毎日忙しいもんね。無理しないように伝えてね、ありがとうー」
「はい、ご心配すいません。伝えときますね! メロンちゃん、お大事になさってください」
小林さんを送り出し、フゥーと息を吐く。
(本当に今日の2人はやばかったなー。あんなお兄ちゃん見るの初めてだわ。雪さんに拒まれたのかしら? でもその場面見たかったー! 多分雪さん家よね? あー雪さん家の壁になりたい!(作者も))
その場面を想像しながらニヤニヤしているさくらだったが、
(あっ、いけない! 2人を問い詰めなきゃ!)
思い直して、さくらは斉川と倉木の所に近づいて行った。
「さあ、仕事は終わったわよ! 2人ともそこに座りなさい」
さくらに弱い斉川は素直に座る。さくらに弱くはないが倉木も従う。
「はい、まずお兄ちゃん! どうゆう事? 雪さんにキスしたって? 」
「してない、しようとしただけだ」
「一緒でしょ? 何があったか詳しく話しなさい! 」
鬼の形相で斉川に詰め寄る。
さくらの圧に負けた斉川は、昨日の話をした。
話を聞いたさくらは、呆れた顔で、
「お兄ちゃんって、頭いいと思ってたけど、バカなんだね」
「なんだよそれ? 」
「だって、好きとか、付き合ってくれとか言ってないじゃん! そりゃ雪さんからしたら、お兄ちゃんが何考えてるか分からないから戸惑うに決まってるわよ! 」
「ホント、バカ!! 」
「やーい、バカバカ」
倉木も一緒にからかう。
「そうだよ、和希。ちゃんと告白してからじゃないと」
「おい、なんで俺だけ攻められるんだ? 翔だって今家に避けられてるんだろ? 」
「俺は告白しただけで、手はだしてないよ」
「だから、してない! 未遂だ」
「だって、颯太さんが来なかったらしてたんでしょ? 」
「グッ…」
さくらの言い返しに、黙ってしまった。
「とりあえずお兄ちゃんは、雪さんとちゃんと話す事! いいわね? 」
「…わかった」
「はい! 次は翔さん。律さんに告白したんですか? 私的にはもう少し後にすると思ってましたよ? 」
「はは、さくらちゃんは鋭いね。俺もまだ早いと思ってたんだけど、昨日律が急に怒りだしてね」
「なんで怒ったんですか? 」
「実は、偶然元カノの愛菜に会ってね」
倉木は本屋での出来事をさくらに話しだした。
「…それで急に律がイライラしだしたから、軽くからかったら怒り出して「俺を困らせて楽しいのか!」みたいに言われてね」
「それで正直な気持ちを言ったんだよ」と倉木は言った。
「そうだったんですね…でも、その様子だと私もヤキモチ焼いてる様に聞こえるから、律さんも翔さんの事好きだと思いますよ? 」
「そうだといいけど、律は思ってる以上に恋愛にストップをかける子だからね。その扉を開いてあげたかったんだけど、少し早かったかな…」
そう言って、天を仰ぐ。
「これからどうするんですか? 」
「うーん、しばらく連絡しないようにするよ。律も考えたいだろうし、少したってまた気持ち聞いてみるよ」
「振られたら、ヤケ酒よろしく」とおどけて見せた。
斉川も倉木が軽い気持ちで、人に告白しない人間なのは知ってるので、
「頑張れよ」とエールを送る。
「とりあえず、今朝の理由がわかってよかった! 2人とも頑張ってね! 」
(本当にリアルカップルを間近で見れるよう、お願いします! )
自分の願いも込めて、2人にエールを送るさくらであった。
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