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第25話(愛菜の挑発)

突然の元カノの登場に、ビックリした律は、 「どうして、ここに? 」 「突然すいません、今お時間ありますか? 」 「少しなら、大丈夫だけど…」 (なんで、元カノ俺に会いに来るんだ? しかもなんで俺がここにいる事知ってるんだ? ) 理由がさっぱり分からず、戸惑いながら、受付にあるテーブルに向かい合わせで座る。 「突然でビックリしますよね? ごめんなさい。実は私、さくらと友達だったので、さくらに聞いたんです」 「あー、そうなんだ。って、友達だったって今は友達じゃないの? 」 「聞いてるかわかりませんが、元々翔を紹介してくれたのがさくらで、私が翔と別れた理由が私の浮気だったので、さくらも怒って友達じゃあない! って絶交されてたので…」 「あっ…そうなんだ…」 気まづい空気が流れる。 (さくらちゃんに聞いたのはわかったけど、何で俺に会いに来たのかさっぱり分からない) 「あの、私ずっと後悔してて、翔と別れた事。あんなに、私を好きでいてくれたのは翔だけだったんです! 久しぶりに会って、やっぱり私は翔が好きって気づいたんです! 」 バァーっとまくし立てる様に愛菜が話しだした。 「だから、こないだ翔に本を返してもらうがてら、会いに行ったんです」 (あー、こないだ見かけたのはそれだったのか! ) 「その後、ご飯に誘ったら来てくれたので、翔も少しは私に未練あるのかな? って思って…」 (この子、なんなんだ? 翔さんの事振っといて、まだいけそうとか、なんだよ! 翔さんもなんでご飯行くんだよ! この子の言う通り未練あんのかよ! ) 律は愛菜の話を聞きながら、イライラしてきた。 「丹治さんだっけ? 君さー、言ってる事酷くないか? 翔さん傷つけて、また付き合いたいとか、なんでそうなるんだ? 」 「でも、気持ちは変わるじゃないですか! 時間がたってから、本当の気持ちに気づく事もあるんです! だから、私は翔とまた付き合いたいです! 」 (なんだ、その思考は? ) 愛菜の言ってる事に、全然納得が出来ない律だった。 「で、今日ここに来たのは、翔から今好きな子がいるって言われて…名前聞いたらあたなだったので、会いに来ました」 (翔さん、ちゃんと俺の事好きって言ったんだ…) それを聞いて、律は嬉しくなった。 「でも、脈が無さそうとも聞いたので、それなら翔の事待たせないで下さい! って言いたくて。あなたから、振って下さい。それなら翔も諦めて私と付き合ってくれはずなので」 「いやいや、はずって何? なんでそんなに自信あるの? 俺には理解出来ないよ。それになんで君に言われて翔さんを振らなきゃいけないんだよ」 「じゃあ、翔と付き合うつもりなんですか? 」 「そ、それは…まだ分からない…」 「そんな風に翔を待たせて振り回してるのは、あなたじゃないですか? 翔が落ち込んでるのを見て楽しんですか? 」 愛菜の言葉が律に刺さる。 (クソッ! ムカつくけど、やってる事は同じだ。翔さんを傷つけてる…) 「ほら? 言い返せないじゃないですか? 振るつもりも付き合うつもりもないなら、邪魔しないで下さい! 私今日、翔とデートなんで」 「えっ? 」 「翔を映画に誘ったら、OKしてくれたの。今日もう1回付き合ってって言うつもりです。翔もあなたより女の子の私の方がいいに決まってますから! 」 そう言って、愛菜は店を出て行った。 律は、その場に立ち尽くし、言い様ようのない怒りに震えていた。 (クソッ! なんなんだ、あの子は? なんで翔さんはあんな子と付き合ってたんだ? さくらちゃんの友達でも腹が立つ! ) 「でも、俺に言い返す権利も止める権利もないよな…」 「律…大丈夫? 」 保育園の方まで話が聞こえてきていたので、内容はだいたい理解していた。 「ああ、俺には関係ない! 勝手にすればいい! 」 「倉木先生に連絡しなくていいの? 」 「恋人でもない俺が、行くの止めろ! って言う権利なんてないよ。それにまだ仕事が残ってるから」 そう言って律は、保育園の方に戻って行った。 そんな律を心配そうに見る雪は、携帯をだし、さくらに連絡した。 __________________ 愛菜が帰って行ってから、2時間が立った。 「律、僕もう終わったから、帰るよ。律はどうするの? 」 「先生が迎えにくるんだろ? 先に帰りな。俺はこのカルテ書いたら帰るよ」 「そっか、わかった。じゃあお先にね! 」 「ああ、お疲れー」 雪が帰って1人になり、ハァーとため息をつく。 (本当に俺は情けないな…まだウジウジしてるなんて…雪は素直でいいな…俺も雪みたいだったら、素直に翔さんに甘えられるのかな? ) 壁にかかってる時計を見て、 「もう、映画終わったのかな? その後どうするんだろう? 」 ふと律の頭に、ラブホテルにいる2人が映る。 (翔さんは、夢に出てきた様に、優しく愛撫するのかな…) その姿を想像するだけで、律の胸は張り裂けそうになる。 今まで、リアルに女の子と居た所を見てなかっただけに、愛菜の登場は律に現実を見させる存在となった。 「やっぱり嫌だ! 」 ガタッ! 思いっ切りイスから立ち上がり、律は携帯を手に取る。 ツツツツ…ツツツツ… 「ただいま電波の届かない所にいるか、電源が…」 「クソッ! まだ映画見てるのかよ! 」 律が1人でイライラしてると、 ガチャ! 「律さんいる? 」 さくらが入って来た。 「さくらちゃん! どうしたの? 」 「律さん、ごめんね。 愛菜が来たって雪さんから聞いたの」 「えっ? 雪のやつ、さくらちゃんに連絡してたの? 」 雪から聞いてない律は驚いた。 「うん、突然愛菜が来て、律さんにケンカ売ってたって…ごめんなさい。私愛菜に翔さん諦めたいから、好きな人に会ってみたいって言われて」 「全然大丈夫だよ! さくらちゃんのせいじゃないし。大した事言われた訳じゃないし。雪は大げさだなー」 さくらに罪悪感を持たせない様にフランクに話す。 「それならいいけど…本当にあの子腹立ちます! さっきも映画観ていい雰囲気だから、バーで飲みながら迫るってLINEきたんですよ! 」 さくらがプンプンしながら、説明する。 「えっ? もう映画は観終わってるの? 」 「そうですよ! 映画でも腕組んで観たとか、惚気ばっかり! 腹たってきたから、もう1回絶交してやる! 謝ってきたって、許してあげ…キャッ! 」 突然律がさくらの肩に手を置いた。 「ごめん、さくらちゃん! そのバーってどこか知ってる? 」 「えっ? バーの場所ですか? えーっと、確かLINEに駅前のDreamって入ってたと思いますけど…」 「ありがとう! 俺ちょっと行ってくる! さくらちゃん、カギ閉めといて! 」 律はさくらに店のカギを放り投げ、走って店を出て行った。 「えっ? あっ? 律さん?ちょっと! …頑張って」 そこにはカギを片手にニヤニヤしているさくらがいた。

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