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第26話(律の告白)
---駅前のDream---
「ハァハァハァ…ここか? 」
律は息を切らしながら、バーの看板を見た。
(なんか、オシャレな所だな…ここに翔さんと元カノがいるのかな? 翔さん、ずっと電源切ってるけど、もう俺からの連絡嫌なのかな? )
律はそーっとバーの扉を開けた。
中は薄暗いが、賑やかな音楽が流れ、明るい雰囲気だ。
(よかった、カップル専用とかじゃなくて…)
そんな事を思いながら、中をキョロキョロしてると、
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか? 」
店員が声をかけてきた。
「あっ、すいません。友達を探してて…」
断りを入れて、奥に進んでいく。
ソファ席やテーブル席を進むと奥にカウンターがあり、そこに倉木と愛菜を見つけた。
(居た! なんだよ、楽しそうじゃん…)
2人の距離感にイライラしながらも、声をかけれず少し眺めていたら、愛菜が律に気づく。
愛菜は意地悪そうな顔を律に見せ、急に倉木の腕に自分の腕を絡ませた。
そして、倉木の耳元に何か囁いた。
すると、倉木が手をだし愛菜の頭を撫でだした。
(なんだよそれ! )
倉木の行動にカッとなった律は、思わず近寄って倉木の腕を掴む。
「えっ? あっ、律? どうしてここに? 」
律に腕を捕まれ、驚くように倉木が言った。
「俺が、ここにいたらマズイんっすか? 俺の事好きって言ってるのに、他の女の子を口説いてるから? 」
「律、ちょっと待って、何を言ってるの? 」
「とぼけるのか? 今彼女の頭撫でてただろ? 彼女が腕組んできても嫌がらないし! もう俺の事なんてどうでもいんだろ? あんなに、好き好きって言ってたのも結局俺をからかうだけだったんだな! 」
「ちょっと、今家さん! 突然邪魔して怒るとか有り得なくないですか? 帰って下さい! 」
「帰らない! 翔さんに説明してもらうまでは! 」
「見た通り、翔は私の方がいいんですよ! 」
「えっ? えっ? なんで2人が知り合いなの? いつから? えっ? どうゆう事? 」
全く状況が分からずキョトンとする倉木。
「それは君の意見だろ! 俺は翔さんから聞きたいんだ! 」
「聞いてどうするんですか? 翔と付き合う気がない、あなたには関係ない事ですよね? 」
「付き合わないなんて、言ってないだろ! 」
それを聞いた愛菜は、挑発するような口調で、
「じゃあ、翔と付き合うつもりがあるんですか? 」
「ああ! 付き合うよ! 」
シーン…
一瞬静かになった後、
「えっ? 」
「えっ? 」
愛菜と倉木が同時に驚く。
「えっ? 律今なんて言った? 」
「翔さんと付き合うって言った! 」
「えっーと、それはどうゆう意味で? 」
「翔さんが、好きだから付き合うって意味! 」
「えっ? 」
倉木は突然の律の発言にビックリしてしまう。
「ちょっと、待って下さい! あなた今日はそんな事言って無かったですよね? 今私が嫌だから、その場しのぎで言ってますよね? 」
「違う! 君と話した後、考えたんだ。君に翔さんを渡したくないって。 それって俺も翔さんが好きって事だろ? だからそれを言いにきた! ただ、もう遅いかもだけどな…」
律は倉木の方へ向いて、
「翔さん、気づくのが遅くてごめん。今更だけど、俺は翔さんが、好きだ。待ちくたびれて元カノとヨリを戻しても文句は言えないけど、俺の気持ちだけは伝えたくて」
「ちょっと待って! さっきから、2人とも何を言ってるの? なんで愛菜とヨリを戻す話になってるの? 俺は律の事が今でも好きだし、愛菜とヨリを戻すつもりもないよ? 愛菜もそれは分かってるよ? 」
「えっ? だって…」
律は倉木の言葉に驚いて、愛菜を見る。
そこにはさっきまで、意地悪そうな顔をして言い返してきた愛菜はおらず、ニコニコして、嬉しそうな愛菜がいた。
「今家さん、ごめんなさい! 」
そう言って愛菜は頭を下げた。
「えっ? なんで謝るの? どうゆう事? 」
急にしおらしくなった愛菜の態度に律は戸惑いを隠せない。
「今説明しますね、ちょっと待ってて下さい! 」
愛菜は、携帯を出して誰かにかけだした。
「うん、もう大丈夫。入って来て」
携帯を切って、
「今来ますんで、待ってて下さい」
『来るって誰が? 』
倉木も律もこの状況が掴めずにいた。
「私です」
2人の後ろから現れたのはさくらだった。
『さくらちゃん? 』
「どうして、ここにいるの? 」
律が不思議そうに聞く。
「律さん、すいません。実は…」
さくらの話によると、愛菜が本屋で倉木に会ったのは偶然で、本を返してもらいに病院に行ったのも事実らしい。
ただ、愛菜に倉木への未練はなく、倉木から好きな人の話を聞いて、さくらに連絡をとって、上手くいきそうか聞いてきたと言うのだ。
愛菜は「翔には幸せになってもらいたい」と言っていたので、さくらは事情を話して愛菜に協力をしてもらったのと2人に伝えた。
「愛菜の登場で、律さんがヤキモチを焼けば翔さんへの思いに少しは気づいてくれるかな? と思ってお願いしたんですが、ここまで上手くとは思って無かったです」
「ちょっと、やりすぎました。ごめんなさい」
「ごめんなさい」
さくらと愛菜が同時に謝り頭を下げる。
律は慌てて、
「ちょっと、2人とも止めてよ! 頭上げて。怒ってないから」
「本当ですか? 」
「本当に! むしろ感謝してるよ。ムカついたけど、彼女のお陰で自分の気持ちに気づけたし、君演技上手いね? 全然わかんなかったよ」
変な所を褒める律だ。
「高校の時、演劇部にいたので」
「そうそう、愛菜演技だけは上手かったよね? 」
「何よ、だけとは」
「あのー…」
和気あいあいとしだした3人に、倉木が手を上げる。
「ちょっと、いいかな? 和気あいあいとしてる所を悪いんだけど、俺としては律の言葉に確信が欲しいんだけど」
倉木は律を見ながら、
「律、さっき言った事は本当かい? 愛菜の言葉に言い返しただけじゃなくて? 」
「そう聞こえちゃうよね? 俺もう決めましたから、翔さんと付き合います! 」
『オーーー!! 』
律の宣言に、聞き耳を立てていたお店のお客達がどよめいた。
「付き合うって分かってる? 今まで通りご飯食べてバイバイとかじゃないんだよ? ちゃんと考えた? 」
「イヤイヤ、それくらい分かってるよ! 子供じゃあるましい! なんだよ、考えたら考えたで疑うんっすか? 」
「そうじゃないけど、突然過ぎて、実感がわかなくて…本当にいいの? 」
「もう!! しつこいな! これなら納得してくれる? 」
そう言って、律は倉木の襟を両手で掴み、自分から倉木にキスをした。
『オーーー!!!!』
『キャーーー!!!!』
パチパチパチ!!
店内のお客達、さくら、愛菜がどよめき拍手をした。
「やっぱり、律には敵わないな」
唇が離れ、倉木は嬉しそうに笑った。
律も少し照れたように頭をかいて笑った。
「翔さん、律さん、おめでとう! 私は愛菜と飲んで帰ります」
「うん、律を送ってくよ」
「はい、ありがとうございます。律さん、お店のカギです」
「ありがとう、さくらちゃん。またね」
律と倉木はお店を出た。
出てすぐ、
「あー、恥ずかったー! 2度とこの店来れないわ」
律が頭を抱え嘆く。
「はは、逆に知られたから行きやすいかもよ」
「いやーマジで嫌っすよ! ところで、元カノの演技はわかったけど、なんで翔さんが、彼女の頭を撫でてたんだよ! 」
「違う、違う! 撫でてたんじゃなくて、頭の飾りを直してくれって言われたから、触ってただけだよ! 」
「ホントに? 」
「本当だよ! 律、今度こそ本当にヤキモチ焼いてる? 」
「今度こそ、じゃなくて今回も焼いたよ! 」
不貞腐れ気味に言う律を、嬉しいそうに眺めながら、
「律、今日はありがとね? こんな嬉しい日は初めてだよ」
倉木は自分の思いを伝えた。
「翔さん、ホント待たせてごめん」
律も改まって言った。
「律が謝る事ないよ、それだけ俺の事考えてくれたんだろ? それだけで嬉しいよ」
「律、これからよろしくね」
と、手を出す。
「こちらこそ」
律もつられて手を出した。
倉木は、出された律の手をとって甲にキスをした。
「しょ、翔さん! 」
「さっきのお返しだよ」
「なんだよ、子供みたいな事して」
それでも、嬉しそうな顔をする律だった。
「さっ、帰ろ。送ってくよ」
そう言って2人は家路につく。
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---Dream---
残された腐女子の会話…
『カンパーイ!! 』
「あー、美味し! いやー、本当にあそこまで上手くいくとは思わなかったよね? 」
「ホント、ホント! まさか、律さんがお店放り出して、走って行くなんて、ビックリよ! 」
「うわー、その場面見たかったなー! 」
「私だって、付き合う宣言した瞬間見たかったー! 」
「マジでかっこよかったよ! 」
「いいなー、絶対その場面でご飯3杯はいけるわ」
「分かるー、でもその後のキス!! もう、あれは反則だわ! 」
「ね、脳裏に焼き付けたわ! 」
「ホント、動画撮っとけばよかったー!! 」
「よし! 今日はとことん語ろう! 」
「OK! 付き合うよ! その代わり和希さんと雪さんの話も教えてよ」
「いいわよー、まずは…」
「えっ? そんな事が? 」
腐女子の夜はとても長い…
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