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第28話(さくらと颯太、居酒屋デート)
斉川と雪、倉木と律、それぞれが付き合いだして、しばらくがたった。
ドンッ!
ビールを一気飲みした、颯太は、
「ホンットに雪は毎日、和希和希の連呼で俺は悲しいです…いや、さくらさんのお兄さんを悪く言うつもりはないんですが、余りにも惚気けるので、寂しくなって…律は律で翔さん、翔さんでみんな俺を無視して…」
お酒の勢いもあり、さくらに日頃の雪の惚気の愚痴を話した。
「全然大丈夫ですよ。お兄ちゃん、溺愛してますもん。本当に雪さんは愛されてますね」
「雪さんが素敵だから、あんなお兄ちゃんでもメロメロなんですよ」
と、雪を褒めてあげる。
「そうなんですよ! 雪は本当にいい子で、可愛くて、こないだも仕事が毎日忙しいからって、朝弁当とか作ってくれて! 」
雪の話になると途端に色んな雪自慢をしてしまう颯太だった。
さくらはそんな話でもニコニコと全部聞いてあげる。
散々話した後、ふと颯太は思った事をさくらに聞いてみた。
「さくらさんはどうして、俺の話を怒らず聞いてくれるんですか? 普通の子は、しばらくすると怒りだして、帰ったりするけど…」
「アハハ、颯太さん、自覚はあるんですね? 面白い! 」
「いや、本当はその子の話も聞いてあげなきゃとか思うんですが、雪の話になると、ついつい長くなって…」
「私は気にならないですよ。雪さんを知ってるのもあるけど、颯太さんが嬉しそうに話してる姿を見るのが、好きなので」
「グフッ! 」
ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ!
急に好きと言われ、ビールをむせる。
「大丈夫ですか? 」
「だ、大丈夫です! 年上をからかわないでください」
「からかってないですよ? 」
「だって…好きとか、余り気軽に言っちゃダメですって! 」
「颯太さんも雪さんに、好き好きって言ってるじゃないですか? 」
「いや、あれは兄弟愛みたいな物だし…」
(そっか! さくらさんの好きも、俺を兄の様に慕ってる好きか! 勘違いする所だった! ビックリしたー)
納得した颯太はまたビールを飲み出した。
「颯太さん、私の好きは兄弟愛の好きとは違いますよ? 」
「グフッ!! 」
再度ビールを吹く。
(いや、なんで俺が考えてる事がわかるの? やっぱりさくらさん、怖い…)
「あのー、さくらさん」
改まって、颯太が聞く。
「俺はつまらない男ですよ? 仕事と雪の話しかしないし…女の人と付き合う事もないし…さくらさんを喜ばせる事なんて出来ないし…」
(こうやって口に出すと、いい所がない男だな、俺って…)
「颯太さんは、自分の事下に見すぎですよ! 私からしたら、優しいし、家族思いだし、仕事もちゃんとする。私とも会ってくれるじゃないですか? これはイヤイヤですか? 」
「全然、イヤじゃないよ! さくらさんは明るくて楽しいし、つまらない俺の話も聞いてくれるし…それに…」
「それに? 」
「…とっても可愛いです」
急に可愛いとか言われて、柄にもなく、ドキッとするさくら。
(うわー、反則だわ! だから、颯太さんは可愛いのよね)
「ありがとうございます。じゃあ少し打ち解けるとして、敬語やめて下さい。あと名前もさん付けは他人行儀でイヤです! 」
「えっ? 敬語か…仕事の癖でつい使っちゃうので…気をつけま…気をつけるよ」
「次は名前! 」
「さくらさんはダメ? 」
さくらが無言で首を振る。
「じゃあ…さくら…ちゃ…さくらちゃん? 」
再度無言で首を振る。
「えっ? ダメなの? 」
情けない声がでる。
「さ…さくら? 」
勇気を振り絞り、呼び捨てにする。
「はい! 」
さくらがニコニコと返信をする。
(えー、呼び捨てが正解? やっぱりさくらさんは怖い…でも楽しい…)
「ようやく、少し近づけた気がします! これからもよろしくお願いします」
「は、はい! あっ、うん。よろしく」
その時、さくらの携帯が鳴る。
「あれ? お兄ちゃんだ」
「もしもし? 」
「さくら、今いいか? 」
「早めにね、今颯太さんとご飯食べてるから」
「お前、いつの間に! 俺に言わずに行ったのか? 」
耳元で、ギャーギャーうるさく怒る斉川に、携帯を耳から離す。
「もう! うるさいなー用事は何? 」
「お前…帰ってからまた話聞くぞ! 用事は雪が、さくらの誕生日が近いから誕生日パーティーやらないか? って言ってて、日にちを聞いて欲しいって言われてな」
「うわー、雪さんありがとう! お兄ちゃんとは違って優しいのね! 」
「余計な事言うな! 」
「今月は予定あるから、来月頭の休みなら大丈夫よ」
「わかった、翔達にも言っとく」
「颯太さんも連れて行っていい? 」
「ダメだ! 」
「じゃあ、私行かない! 雪さん悲しむなー」
「ぐっ…わかった…いいぞ」
「ホント? ありがとうー、楽しみにしてるね! 」
そう言って携帯を切ったさくらに、
「あのー、さくらさん…じゃなくてさ、さくら? 俺が行ってもいいの? 」
「えっ? 大丈夫ですよ。今の聞いてたでしょ? 」
(イヤ、今の聞いてて、全然大丈夫な気がしないのだが…)
「そっ、そうだね、じゃあいつ? あ、その日なら仕事早いから参加するよ」
斉川に会うのはイヤだが、さくらに会えるのは嬉しい颯太だった。
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