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第29話(再度安田登場!)
「さくらちゃん、どうでした? 予定合わなかったですか? 」
トイレから戻ってきた雪は、斉川の顔が嬉しそうじゃないので、ダメだと思って聞いた。
「ああ、大丈夫だってさ」
「えっ? じゃあなんでそんな顔してるんですか? 」
「お前の兄も来るって言われた」
「アハハ、それで和希さん、機嫌悪いんですね」
雪はおかしくなって笑った。
「でも、兄さんも和希さんに怒ってるからお互い様ですよ? 」
「それは分かってるが、つい…」
「じゃあ機嫌直して、楽しめるように計画しましょ! 」
雪が嬉しそうに斉川の腕に抱きつく。
斉川は嬉しそうに、雪の頭を撫でながら、
「わかったよ、さくらを喜ばせような」
「はい!」
「じゃあ俺もトイレ行ってくる、少し待っててくれ」
「分かりました、そこのお店にいます」
雪は斉川を待つ間、雑貨屋に入って行った。
(このマグカップ、可愛いな。和希さんとお揃いで欲しいな! ってそんな事言ったら重いかな? でも同じ家で一緒にコーヒー飲むとか憧れるなー)
斉川とお揃いのマグカップでコーヒーを飲むのを想像して、ニヤける雪の肩を掴む人物がいた。
「うわ! 早かったですね? 」
斉川だと思って言いながら振り向いた。
そこに居たのは…
「えっ?…安田さん? 」
「雪君、久しぶりだね」
「どうして? 」
安田の登場に驚いて、言葉が出ない。
「偶然だよ、偶然。君とあの男を見つけてね。えらいイチャイチャしてたけど、君達は付き合ってるのか? 」
「ち、違いますよ。和希さんとはそんな関係じゃ…」
「へー、もう和希さんとか呼んでる仲なんだ? 」
「…」
「否定しなくてもいいよ、僕は気にしない。雪君、今度俺とも会ってくれ、話がしたいんだ」
「それは…無理です」
「どうしてだい? もうあんな事はしないし、あの時は酔ってたんだよ。迷惑かけてごめんね。シルクの事を相談したいんだ。あれから他のサロンも行ったけど、シルクが懐かなくてね」
「僕はこれ以上、お話する事はありません」
そう言って、その場を離れようとした。
「待って! 」
ガシッと雪の腕を掴む。
「離して下さい」
「君がそんな態度だと、いいのかな? 」
「えっ? 」
「あの男は獣医なんだろ? こないだ俺を殴った事SNSに拡散するよ? そしたらどうなるとおもう? 君が事実を言ってもいいけど、俺は少しふざけただけなのに、あいつが急に殴ってきたって主張するよ? 」
「安田さん…どうしてそんな事を? 」
「君がシルクを無視するからだろ? シルクは本当に君に懐いてたんだよ。それなのに君はシルクを捨てて! 」
雪の腕を掴む力が強くなる。
「痛っ! 安田さん痛いです! 」
「じゃあ、シルクの相談乗ってくれるか? 」
「そ、それは、痛っ! 分かりました、乗りますから、離して下さい」
「本当かい? 」
雪の腕を離し、嬉しそうに聞く。
「シルクちゃんの事だけですよ? 」
「うん、それでいい。シルクの事が本当に心配なんだ」
「じゃあ、お店にまた連絡して下さい」
「お店じゃなくて、雪君のLINE教えてよ」
「それは、ちょっと…」
「だったら、四六時中店に電話してもいいのかい? 」
「それは…分かりました」
雪は渋々LINE交換した。
「雪君、ありがとう! じゃあシルクの事で連絡するよ。あの男には言うなよ! 言ったら拡散するからな! 」
「分かってます。相談乗るので、変な情報は流さないと約束して下さい! 」
「もちろんだよ、じゃあね」
意気揚々と帰って行く安田の後ろ姿を見て、深いため息をつく。
(ハァー、どうしよう? LINE交換しちゃった…律か兄さんに相談しようかな? でも安田さんにバレて先生に迷惑かけちゃいけないし…僕も自分の事なんだから、頼らず解決しなきゃ! )
「雪、雪、雪!! 」
「うゎ! か、和希さん、いつからそこに? 」
「さっきだぞ? 何回か声かけたのに返事がないから、どうかしたか? 」
「いや、なんでもないです…ちょっと考え事をしてて…」
「そうか? 顔色悪いけど、体調悪いなら帰るか? 」
「そ、そうですね。ちょっと疲れたのかも…今日はもう帰ります」
何とか斉川に迷惑かけないように、雪は解散を提案した。
「わかった、じゃあ送ってくよ。さくらの誕生会は時間決まったら連絡するな」
「はい、ありがとうございます! 」
斉川は雪の体調を心配している。
雪は斉川の心配に申し訳ない気持ちになった。
(和希さんに嘘ついちゃった…でもSNSなんかに拡散されたら、病院の評判にも関わるし…シルクちゃんの相談乗ったら、終わりにしてもらおう! )
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