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第30話(安田の暴走)
「ただいま…」
「雪、早かったな? 今日は先生とデートじゃないのか? 」
「うん…ちょっと疲れてて、早めに帰ってきたよ。僕もう寝るね…」
「ちょっと雪、ホントに大丈夫か? 」
「痛っ! 」
引き止めようと、雪の腕を掴んだら、思いのほか痛がったので律はビックリした。
「おい、雪腕痛めたのか? ちょっと見せてみろ? 」
「だ、大丈夫だよ。さっきぶつけただけだから! おやすみ! 」
律に悟られないように急いで部屋に入る。
そんな雪を見て、律は携帯を取り出す。
「もしもし、先生っすか? やっぱり雪変っすね! 顔色悪いけど、具合悪いって感じじゃなくて、なんか悩んでそうな…そんな感じに見えました」
「そうか、俺がトイレ行くまでは元気だったから、気になってな。他に何かあったら、連絡くれ」
「分かりました! あと、雪どこかに腕ぶつけたんっすか? 痛がってたけど? 」
「今家、どうゆう事だ? 」
斉川の声が厳しくなる。
さっきのやり取りを斉川に説明すると、
「そうか…わかった。教えてくれて助かったよ。また連絡する」
「了解しました」
(雪、1人で悩むなよ…)
昔から、限界まで我慢する雪を知っている律は心配そうに雪の部屋を眺める。
「ハァー、律にも心配されちゃったな…」
雪は部屋に入りプリンを抱っこしてベッドに座る。
(自分で連絡先教えたんだから、自分で何とかしなきゃ! 和希さんにこれ以上迷惑かけちゃダメだ! )
自分のせいで、安田を殴ってしまった斉川を守りたい一心から、安田に連絡先を教えてしまった雪。
携帯を眺めて、またため息をつく。
「タタタン、タタタン」
「あっ…安田さんだ…ハァー、はい? 」
「雪君かい? 早速ごめんね。シルクの事なんだけど…」
「はい、はい、えっ? 明日ですか? でも…分かりました。仕事終わってから少しだけなら…はい、連絡します。…はい、失礼します」
携帯を切ってまた、深いため息をつく。
(ハァー、早速きた。明日か…シルクちゃんに会わせるって言ってたから、会ったら、もう連絡するの止めてもらおう! 約束は守ったんだから! )
連絡先を交換した事を、既に後悔した雪は明日はちゃんと言う! と心に決めた。
_________________
「雪、お疲れ! 帰りメシ食ってかないか? 今日翔さん忙しくてさ! 」
「あっ、ごめん。今日はちょっと用事があって、行く所があるんだ」
「先生とご飯か? 」
「えっ? うん、まあそんな感じ…先に帰ってて」
「わかった、余り遅くなるなよ? 颯太さんが心配するからな」
「うん、早めに帰るよ」
「じゃあな、お先にー」
「うん、お疲れ様! 」
律が店を出てから、携帯を出し安田にかけた。
「はい、終わりました。どこに行けばいいですか? はい、はい、あそこのドッグカフェですね? 場所は分かります。30分位では行けます。はい、では…」
「フゥー、よし! 行くぞ! 」
自分に活をいれ、雪は店を出た。
(和希さんは今日夜オペがあるって言ってたから、連絡は来ないはず。オペが終わるまでに話終わらせなきゃ! )
急ぎ足て、目的地に向かう。
約束のドッグカフェに着いた雪は店内に入り、安田を探した。
キョロキョロしてると店員が、
「もしかして、安田様のお連れの方ですか? 」
「あっ、はい」
「安田様はこちらです。ご案内します」
「はい…」
店員の後をついて行くと、奥にある個室に着いた。
「安田様はこちらです」
(なんで個室の部屋なんだ? )
雪は少し不安を覚えたが、
「すいません、ありがとうございます」
店員にお礼をいい、個室のドアを開ける。
「すいません、お待たせしました」
「雪君、待ってたよ! シルク、雪君だよ! 」
「アンアンアン! 」
シルクが嬉しそうに雪に飛びつく。
「シルクちゃん、久しぶりだね」
安田は嫌いだが、シルクはやはり可愛いので笑顔になる。
「あれ? シルクちゃん、随分痩せましたね? 毛艶も余り…」
「そうなんだ、それが心配でね。雪君所に行かなくなってから、他のサロンに行きだしてから痩せたんだよ。やっぱり合わないのかな? と思って悩んでるんだ」
(本当にシルクちゃんの事の相談だったんだ…僕疑い過ぎたのかな? )
少し反省しながら、
「そうだったんですね。そのサロンが合わないなら、他のサロンに変えるか、動物病院でお願いするとかしかないかと…後はご飯を変えてみるとか? 」
「ねえ、雪君の所でまたやってもらえないかな? それがシルクにとっては1番いいんだよ」
「安田さん…それはちょっと…」
1番困る質問をされ、雪は返事に詰まる。
「雪君、お願いだよ! これ以上シルクを痩せさせたくないんだよ! 」
そう言いながら、安田が近づいてくる。
(ダメだ! ここでハッキリ言わなきゃ! )
「安田さん、そうゆう話なら僕はお受け出来ません! 」
「雪君、シルクのトリミングしてくれるだけで、いんだ! 俺と付き合ってくれ! とか言ってないだろ? それ位のお願いは聞いてくれよ! 」
「安田さん、とりあえず落ち着いて下さい! 」
「…雪君、悪かった。つい興奮して…とりあえずなんか頼もうか? 」
「はい」
雪と安田は席に着いた。シルクは雪の膝の上に乗ってきた。
(シルクちゃん、やっぱり可愛いなー)
「雪君、何にするかい? お酒? 」
「あっ、僕はカフェラテで大丈夫です」
「そっか、じゃあ俺もコーヒーにしよう。お酒は止めとくよ」
安田がお酒を注文しない事にホッとする雪だった。
(良かった、お酒飲んでなければ、まだ話がしやすいし)
注文した後、改まって安田が、
「雪君、今回は強引に誘って悪かったね。前の事があったから、声かけるのは悩んだんだけど、どうしてもシルクを喜ばせてあげたくて」
(安田さん、一応反省してくれてるのかな? それともシルクちゃんのトリミングして欲しいから、下手にでてるとか? )
安田の思惑が分からず、愛想笑いで留める。
「お待たせしました」
店員がカフェラテとコーヒーを持ってくる。
「さっ、雪君飲んでくれ。後でなんかデザートでも頼んでもいいからね! 迷惑かけたからご馳走するよ」
「そんな、自分で払うので大丈夫ですよ」
そう言いながら、カフェラテに口をつけた。
「あっ、美味しい! 甘いけど少し苦味もあってバランスいいですね? 」
「そうだろ? ここのコーヒーは上手いんだよ! 」
安田は嬉しそうに雪がカフェラテを飲む姿を見つめる。
「雪君、仕事は今は忙しいのかい? 」
「そうですね、最初に比べると落ち着きましたけど、これから年末に向けてはまた忙しく…なりそう…」
話しながら、雪は酷い眠気に襲われた。
(あれ? …急に…眠気が…)
「雪君、どうしたんだい? 」
安田の声が遠く感じる。
「イヤ…少し眠気が…僕、そろそろ…失礼…」
「雪君、疲れてるんだよ、そこにソファがあるから休みなよ? 」
「…いえ、大丈夫…です」
雪は椅子から立ち上がり帰ろうとした。
ガクッ!!
立ち上がると、力が入らず、その場にしゃがむ。
(なんで? おかしい…眠気なんてしてなかったのに…眠い…まさか? )
「ほら、力が入らないじゃないか! ソファに寝なさい」
そう言って、雪を支えソファに寝かせた。
「やす…だ…さん…何か…しましたか?」
襲ってくる睡魔と戦いながら、安田に問う。
雪の質問に、ニヤリとしながら、
「おっ? 雪君は察しがいいね! ちょっと君のカフェラテに、睡眠薬をいれてみたのさ。まさかこんなに効き目があるとは思わなかったよ。味が変わり過ぎるのはマズイから少量にしたんだけどね」
と、悪びれもせず白状した。
「…な、なんで…いつ? 」
「ああ、カフェラテを持ってきた、店員に入れてもらったのさ! お小遣い渡したらすんなり承諾してくれたよ」
雪の唖然とする顔を嬉しそうに見ながら、
「なんでかって? 決まってるじゃないか? 君を俺の物にする為さ! なんであんな獣医と付き合って俺とは無理なんだ? 俺の方が優れてるのに! 」
「や、止めて…和希さんとは…何でも…うっ! 」
話してる雪の口を掴み、
「もう、黙ってな。大人しく寝てなよ。痛くはしないから! どうせ、あの獣医とヤリまくってんだろ? 1回位もらってもいいよな? 」
勝手な理由をつけて、上着を脱ぎすて、安田は雪に覆い被さる。
「やだ! やめ…ろ…」
何とか抵抗しようとするが、寝ないようにするのがやっとで、力が入らない。
「ハァ…いいねーその顔、興奮するよ! やっぱり君は泣顔をそそられるね! 」
安田は興奮して、大きくなった下半身を雪に押し当てた。
「!!」
雪は恐怖から、涙がこぼれる。
「ハァ…ハァ…最高だ! その顔、想像は何回もしたけど、現実はこんなに興奮するとは! 」
安田は興奮しながら、雪のシャツのボタンを外し、中に手を入れ、雪の体をまさぐりだした。
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