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第31話(絶対絶命の雪…)
「や、止めて…」
雪は朦朧としながら、何とか寝ないように抵抗する。
安田はそんな事は気にせず、雪のズボンのベルトを外しだした。
「…やだ…やだ! 和希さん! 」
必死で恋人の名前を呼ぶ雪。
「呼んでも来ないさ! ムダな事はやめ… 」
バタンッ!!
安田が言い終わる前に扉が勢い良く開いた。
驚いて振り返る安田の目には、鬼の様な形相の斉川と、店員を引っ張ってきてる、律と倉木がいた。
「な、な、なんで…ここがわかったん…グワッ!! 」
途中で斉川に殴られて壁まで吹っ飛んでいく。
「ちょ、待て待て! いいのか? 俺を殴って? お前に殴られたって、SNSで拡散するぞ! 」
安田の要求など全く聞き入れる気もなく、再度殴ろうと、拳を上げる。
「ま、待って! 和希さん、殴っちゃダメ! 」
フラフラしながら、雪は後ろから斉川に抱きつく。
斉川はその手を優しく触り、
「大丈夫だ、雪。拡散されようが、俺は気にしない」
雪は顔をフルフル横に振り「ダメ…」と何回も繰り返す。
そんな様子を見ていた律は、
「雪、安心しな。拡散はされないよ。この店員が、安田から、お金をもらって雪のカフェラテに睡眠薬を入れたのを白状したから」
律は安田を見ながら、
「おい、お前の方がヤバいぞ? お前、雪の気を引くためにわざと、シルクを痩せさせたんだってな? しかも今お前が行ってるサロンのトリマーから酷い客だから、出禁にしたって聞いたぞ? 」
斉川も、
「知り合いの獣医からも、薬も要らない、ご飯も変えないとか言って、飼育放棄みたいになってるって教えてもらったぞ! 」
最後に倉木が、
「それは、ヤバいね! アンタこそ動物虐待で訴えられるかもね? 」
「グッ…」
安田はガクッと肩を落とし、観念したのか、大人しくなった。
斉川は雪を抱きしめ、
「遅くなって悪かったな。怖い思いをさせて…もう安心しろ。俺がそばに居るから力を抜いて寝るんだ」
「和希さん…ありがとう…ござい…」
安心した雪は最後まで言いきらず、斉川の腕の中で眠りについた。
斉川は雪をお姫様抱っこをして、倉木に、
「俺は雪を連れて帰る。お前達はコイツと、その犬を保護してくれ」
「ああ、大丈夫だ。早く帰れ。コイツは俺らがしめとくから」
倉木と律は安田を見ながら、ニヤリとする。
「よろしくな、ついでにその店員にもな」
逃げないように、律に押さえられてる店員は青ざめる。
「OK! じゃあ気をつけて帰れよ」
斉川と雪が消えて、倉木と律は、
「さてさて、俺達も本領発揮しますか! 」
ニヤニヤしながら、安田に近づいていく。
安田と店員は青ざめ、今後姿を現す事はなくなったそうだ。
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「う、ううん…」
呻き声と共に雪は目を覚ました。
(ここは…僕は…なんでベッドで寝てるんだ? )
少しボーッとしながら、ベッドから体を起こした。
「ここって…和希さんの部屋だよね? なんで僕はここに居るんだっけ? …そうだ!! 安田さんに!」
ようやく思い出した、雪は時計を見た。
(もう夜中じゃないか! 和希さんはどこだろう? 別の部屋で寝てるのかな? )
雪は斉川を探そうと、ベッドから出ようとした。
「雪、起きたのか? 」
物音に気づいたのか、斉川が入ってきた。
「あ、はい。さっき目が覚めて…」
「そうか、良かった。ずっと寝てるから、今日は起きないかと思って、風呂に入ってた。そばに居なくて悪かったな」
「そんな、和希さん…僕、また迷惑かけちゃって…」
雪はシュンとして斉川に謝る。
斉川はベッドに腰掛け、雪の頭を撫でながら、
「雪、俺はそんな風に思ってないぞ。むしろ遅くなって、不快な思いをさせて、悪かったと思ってる」
「そんな! 来てくれて本当に嬉しかったんです! …そういえば、どうして場所がわかったんですか? 誰にも言わなかったのに…」
来てくれた事は本当に嬉しいが、何故なのかは凄く不思議な雪だった。
「ああ、実はお前の様子がおかしいと思って、今家に尾行してもらったんだ。ただ、途中で見失ったから、着くのが遅くなってな」
「そうだったんですね! 結局みんなに心配かけちゃってたんですね…」
「そんな風に思うな。みんなお前が好きだから、助けたいって思っての事だから。ただ、相談して欲しかった…俺はそんなに弱くないぞ? 」
「ごめんなさい…和希さんの病院がバッシングされると思ったら、言えなくて…シルクちゃんも心配だったし…」
「アイツはその優しさに漬け込んだんだな! でも犬は保護出来たから良かったが」
「はい、シルクちゃんはどうするんですか? 」
「しばらくは病院で、健康状態が良くなるまで入院して、その後里親探すよ」
「じゃあ、その時は僕も協力しますね! 」
「ああ、よろしくな。雪、今日は泊まっていけ。もう遅いしな」
「えっ? 大丈夫ですか? さくらちゃんに悪いんじゃ? 」
「アイツは友達の家に泊まりに行ってる」
これは事実だか、実は…
斉川が雪を抱っこして帰ってきて、さくらはビックリした。
「ちょ、お兄ちゃん! 雪さんどうしたの? 」
「ああ、アイツがまた雪に接触してきてな…」
事情を聞いたさくらは、
「じゃあ、雪さんに泊まってもらって。私は友達の家に行くから。その方が雪さんも気兼ねしないでしょ? 」
「悪いな」
「大丈夫! その代わり帰ってきたら、ゆっくり話聞かせてね」
そう言って、家を出て行った…のが事実である。
「だから、気にせずゆっくりしろ」
「ありがとうございます。泊まらせてもらいます」
「シャワー浴びるか? 」
「すいません、ありがとうございます! 」
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