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第34話(律の悩み)
「ただいま」
「あっ、おかえりなさい! 」
雪が、玄関まで迎えにきた。
「雪、もう起きて大丈夫か? 」
「はい、もう1回寝たら元気になりました! すいません、心配かけて…」
「恋人の心配するのは当たり前だ、気にするな」
一緒にリビングに入るといい匂いがした。
「何か作ったのか? 」
「はい、時間があったから、さくらちゃんに冷蔵庫使っていいか聞いたら大丈夫って言ってくれたので、お昼作りました」
「そうか、ありがとうな。腹減ってたんだ。食べよう」
「はい! 」
雪は嬉しそうに、一緒にテーブルにつく。
「さくらが、来週の誕生日会楽しみにしてたぞ」
「僕も楽しみです! みんなで集まるの久しぶりですもんね? 」
「ああ、そうだな。ところでお前の兄とさくらはもう付き合ってるのか? 」
「えっ、どうでしょう? 兄さん照れて余り話してくれないので」
「そうか…本人に聞くか」
「和希さん、兄さん怖がらせないで下さいね? 」
「お前もか? 今朝翔にも言われたぞ! 」
みんなにそう思われてる事を、やや不満そうにする。
「フフ、和希さんって意外とわかりやすいんですね。僕ご飯食べたら、帰りますね」
「まだ、ゆっくりしてて、いいぞ? 」
「じゃあ、後少しだけ。律にも心配かけてるし、和希さんにもゆっくり休んで貰いたいので」
「わかった。家まで送る」
「ありがとうございます」
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「ただいまー」
「おっ? 雪帰ってきたな? 」
ソファで待っていた律が、声をかける。
「うん、ただいま。律、心配かけてごめんね…」
「いいって、アイツは俺と翔さんで懲らしめたから、大丈夫だ。逆に見失って到着が遅くなって悪かったな」
「ううん、僕の考えが甘かったから、みんなに迷惑かけちゃった…」
「そうだぞ? 次からは自分で解決しようとせず、ちゃんと言うんだぞ? 」
「うん、わかったよ」
「ところで…雪! 」
「うわっ! どうしたの? 」
急に両肩を捕まれびっくりする。
「お前、先生とやったな? やったんだろ? 」
「えっ? な、なんで急にそんな事を? 」
図星をつかれて真っ赤になる。
「帰って来たお前の顔を見たら分かるわ! それに泊まってくるの初めてだし」
「そ、そんなに顔に出てるの? 」
(それなら兄さんにもバレちゃうかな? )
「顔に出てるとかはどうでもいい! どうだった? 教えてくれ! 」
「教えるって何を? 律と倉木先生ならもうしてるんじゃないの? 」
「そう思うだろ? でもまだやってないんだ」
「えっ? そうなの? しょっちゅう泊まってるのに? 」
雪は、付き合ってからしばらくたってたので、律と倉木はもうしてると思っていた。
「そうなんだ、しかもキスも軽いもんだぜ? 激しいのとかなくて、チュッってしてお休みとか…焦れったくて、俺から濃厚なのしても途中ではぐらかすんだよ」
「意外だね? 」
「翔さん、実は後悔してんのかな? 実際抱き合ったら、男だからダメだったとか? 」
珍しく律が悩んでる。
(倉木先生の態度は、そんな感じには見えないけど…)
雪はそう思いながら、
「律、絶対大丈夫だよ。先生に限ってそんな事ないよ! 様子を見てるんじゃない? 」
「そうかな? 」
「分からないけど、今度ちゃんと聞いてみたら? 」
「聞いて、違ったって言われたらヘコむどころじゃないぞ? 」
「だから、絶対ないって! 」
「とりあえず、お前はどうやって先生とやったんだ? 詳しく教えろ! 」
ドサッ!
「雪、今の話は本当か? 」
そこには鞄を落として、泣きそうな颯太がいた。
「あっ…」
「あっ…デジャブ…」
以前にも似た光景を見たような…
「雪! どうゆう事だ? 昨日は色々あって泊まるってさくらから聞いたぞ! 」
『あっ、さくらって呼び捨てしてる』
雪と律が同時に指差しからかう。
「そ、そんな事どうでもいい! 雪話を聞かせなさい! 」
「もう、颯太さん。雪と先生は付き合ってるんっすよ? 今更何を。ほら携帯なってますよ? 」
「お前らはすぐ話を逸らす…本当になってる。…さくらからだ…もしもし? 」
解放されて、ため息をつく雪と律。
「もう、いつも兄さんに聞かれるじゃん! 」
「悪い悪い、詳しくはお前の部屋で…」
2人は雪の部屋に消えていく。
颯太は何か言ってやりたかったが、
「ね、颯太さん。雪さんに何も聞いちゃダメだからね! そっとしといてあげて下さい」
「でも…うん、わかった」
(どうして、この人は俺の考えが分かるんだ? やっぱり怖い…)
さくらには逆らえない颯太だった。
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さくらの誕生日会。
『おめでとう~! 』
パチパチパチ…
「ありがとうございます!」
嬉しそうにさくらが笑う。
「このメンバーで会うのは久しぶりだね? 前回は誰も付き合って無かったのに、今回はみんな恋人持ちになって」
倉木が律を抱き締めながら言う。
「お前は堂々とイチャイチャしすぎだ」
「和希も雪君を膝の上に乗せてもいんだぞ? 」
「アホか、家でゆっくりやるわ」
「うわー惚気けるねー」
「か、和希さん…兄さんもいるので…」
大人2人がお構い無しに話すので、颯太は苦々しい顔をしながら聞いている。
「全く、大の大人が堂々と…」
「あら? 私達もみんなの前でイチャイチャしますか? 」
「ウグッ! 」
颯太がビールをむせる。
「ゲホッゲホッ! また、俺をからかう…」
「だって毎回反応が可愛んだもん」
「おい、お前らの方がイチャついてるだろ? 距離を取れ距離を! 」
「まあまあ和希、もう付き合ってるから、いいじゃないか! でも知らなかったよ。いつから付き合ってるの? 颯太君が告白したのかな? 」
「翔さん、聞いて下さい! 颯太さんはぜーんぜん言ってくれないから、私から言ったんですよ! 」
「そうなの? 颯太君? 」
倉木に見られ、
「いや、あの言おうと思ってたんだけど、しどろもどろになってたら、彼女が痺れを切らして…」
説明してて、なんだか情けなくなる颯太だった。
(俺、いいとこないじゃん…)
「颯太さん、冗談ですよ。自信満々の人なんて見飽きたので、颯太さんみたいに恥ずかしくても頑張ってくれる人が私は好きですよ? 」
「おい、さくら。自信満々って俺の事か? 」
「そうよ! 何をするにも余裕ぶってる兄を散々見てきたのでね! でも、雪さん相手に慌てる姿が見れたのは貴重だわ。雪さん、こんな兄だけどよろしくお願いします」
「そんな、僕はいつも和希さんに助けられてるので、僕こそお願いします! 」
「おい、変なやり取りするな。メシ食べるぞ! 」
「はいはい、颯太さん取ってあげますね」
さくらが颯太に料理を取り分けてる姿を、律は眺める。
(さくらちゃん達、楽しそうだなー。もうやってたりするのかな? なんで翔さんは俺に手を出さないんだろう? クソッ! )
律はビールを一気に飲み干す。
「お代わり下さい! 」
「律、そんなに飲むの早いと酔いも早いぞ? 」
倉木が止めようとしたが、
「明日は休みなんで、大丈夫っす! 酔ったら泊まっていいっすか? 」
「それは、大丈夫だけど、程々にな? 」
律の悩みなど気づいてない倉木は、優しく律の頭を撫でる。
(こんなに、優しいのに何でなんだよー! )
モヤモヤは解決しないまま、いつもよりペースが早くなる律だった。
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