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同棲編 斉川と雪 前編
「和希さん、コーヒーどうぞ」
雪は仕事をしている和希のデスクにコーヒーを置いた。
「ああ、ありがとう」
和希は、ふぅとため息をつき、書類を置き、雪の入れてくれたコーヒーを飲む。
「今度の獣医師会の書類ですか? 大変そうですね? 」
「ああ、あんまり人前に出て話すのは好きではないんだが、大学の恩師に頼まれてな。翔もいるから何とかなるだろ」
「また、倉木先生任せで、怒られますよ」
クスクス笑いながら、斉川を諭す。
「あ、お前まで翔の味方か? そんな子にはお仕置だ! 」
斉川は雪を抱きしめ、お腹に顔を埋めた。
「ちょ、くすぐったいですよ! 冗談ですよ! 冗談! 」
斉川は満足して顔を離す。
「もう! 和希さんって意外と子供っぽいですよね? 」
「雪だけにだよ」
そう言って、チュッとキスをした。
「もう…すぐはぐらかす。 そういえば明後日の誕生日、ご飯何がいいですか? 」
「誕生日か~そうだな…」
斉川はチロッと横目で雪を見ながら、
「明るいところで、雪を食べたいな」
ニヤニヤしながら、また雪を抱きしめた。
「か、和希さん! 僕は食べ物を聞いてるんです! 僕は美味しくありません! もう、考えといて下さいね! 」
雪はスルリと斉川の腕の中から、すり抜け部屋を出て行った。
「相変わらず、照れ屋だな。 さて、もうひと仕事するか! 」
雪の行動に満足した斉川は、再度書類に目を通す。
斉川の部屋を出た雪は、自分にも入れたコーヒーを飲みながら、
「もう、すぐ和希さんは僕をからかう! 恥ずかしがるの知っててわざとやるんだから…」
赤くなった顔を触りながら、ブツブツ文句を言う。
「う~ん、結局何作ろう? 和希さんが喜ぶ物作りたいけど、いつも喜んでくれるから、1番好きなのがわかんないんだよね…」
しばらく考え、雪は携帯でどこかに連絡をしだした。
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駅近くのカフェ、雪はここで人を待っていた。
アイスカフェラテを飲みながら、窓の外を眺める。
(和希さんと付き合いだして、もう1年半か…同棲して初めての和希さんの誕生日、喜んでもらいたいな…)
「雪さん、お待たせ! 」
雪の前にさくらが座った。
「さくらちゃん、久しぶり! ごめんね、時間作ってもらって」
「全然大丈夫ですよ。 相談ってお兄ちゃんの事ですか? 明日誕生日だから、何あげていいとか? 」
「はは、相変わらずさくらちゃんは、勘がいいね! 兄さんも、すぐ嘘がバレそうだね」
「ふふ、颯太さんってホントに分かりやすくて楽しいわよ? 」
「想像つくよ」
一通り颯太を茶化して、雪は改めて、
「明日の誕生日なんだけど、最近獣医師会の仕事で大変そうだから、美味しい料理で祝ってあげたいんだけど…」
「お兄ちゃんは幸せ者だわ、こんな可愛い恋人に愛されて」
「もう、からかわないでよ! 和希さん、ご飯なんでも美味しいって言ってくれるから、ここぞっていうのが思いつかなくて…」
「そうね~お兄ちゃん昔からエビ以外はなんでも食べてたか、特にこれっていうのはないけど…」
さくらは、しばらく考えてから、何かを思いついたようにニヤニヤしだした。
「雪さん、いい事思いついたわよ! 」
「うわ~なんか、その笑顔怖いな~」
さくらの表情に、相談した事を少し後悔する雪だった。
「もう、雪さんったら! ちょっと耳貸して! 」
雪は怖々さくらの方に耳を出す。
さくらはコショコショと自分の計画を雪に伝えた。
「えっ? さ、さくらちゃん! そんな事無理だよ! 」
思わず大きい声を出し、周りに見られる。
「雪さん、声大きい! すいません」
周りに謝ってから、
「絶対、大丈夫ですよ! お兄ちゃん喜びますって! 」
「そ、そんな~」
雪は情けない顔でさくらを見る。
「お兄ちゃんの喜ぶ顔が思い浮かぶわ~」
(絶対、明日は盛り上がるだろうな~あ~見たい! お兄ちゃんと雪さん家の壁になりたい! )
さくらは1人でニヤニヤ妄想が止まらない。
「さくらちゃん、絶対今変な事考えてたでしょ? 」
「えっ? ヤダー雪さんも勘がよくなってきたのね? お兄ちゃん、浮気出来ないわねって絶対しないけど」
「もう、とりあえず参考までに聞いとくね。材料買って帰らなきゃ! 」
「私も晩ご飯の材料買わなくちゃ! 行きましょ! 」
2人とも立って会計をする。
「じゃあ、雪さん頑張ってね! 応援してるから。後で報告よろしくです!」
「もう、やるかわかんないよ! 報告も恥ずかしいのでしません! 」
さくらに、散々からかわれた雪は、顔を赤くしながらスーパーに向かった。
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