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同棲編 斉川と雪 中編
斉川の誕生日当日の朝
「じゃあ、雪行ってくるな。なるべく早く帰るよ」
「はい、獣医師会頑張って下さい! 」
斉川は雪を抱きしめ、チュッとキスをした。
「ハァ、行きたくない…」
珍しく弱音を吐く斉川に、
「もう、頑張って下さい! 倉木先生もいるんですから! 」
「人前で話すの嫌いなんだよな! 誕生日に拷問か? 」
雪を抱きしめ肩に顔を落とす。
「帰ってきてから、お祝いしましょ? ケーキ買ってますから」
そう言って、雪は自分から斉川にキスをした。
雪からキスをするのは珍しいので、斉川はびっくりして、自分からまたキスをする。
「ちょ、和希さん、アッ…もうダメですよ…行かなきゃ…ンッ…」
「もうちょっと…」
斉川のスイッチが入ってしまい、雪にキスをしながら、抱きしめていた手を離し、雪の体を触りだした。
(まずい! 和希さんのスイッチが入っちゃった! )
雪は慌てて、
「和希さん! もう行く時間です! 遅刻しますよ! 」
斉川を現実に戻し、自分から引き剥がした。
「チッ! クソッ! 帰ったらゆっくり堪能するからな! 」
名残惜しそうに、もう1回キスをして、家を出て行った。
「はぁ~危なかった! 」
雪は何とか、斉川を遅刻させずにすんでホッとした。
「さて、帰って来る前までに準備しとかなきゃ! 」
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「よっ、和希! 遅刻しなかったな? 」
待合室で、倉木が声をかけてきた。
「あれ? えらい機嫌悪いな? 雪君とケンカでもしたのか? 」
からかう倉木に、ジロッと横目で睨みながら、
「してない。 早く帰りたいだけだ! 」
「来たばっかだぞ? それに終わったら打ち上げがあるし」
「雪が、ご飯作って待ってるから、俺は参加しない」
「全く、お前は社交性がないな? まっ、今日はお前の誕生日だから、仕方ないけどな。 俺が代わりに参加しといてやるよ。 ほれ、happybirthday」
そう言って、倉木は小さな袋を渡した。
「なんだ? これは? 」
訝しげに、袋を開けようとした。
「おい、ここで開けるな! 帰って開けろ! どうせ、夜はお楽しみだろ? そん時開けろよ」
倉木はニヤニヤしながら斉川を見る。
「うるさい! お前は最近どうなんだ? 今家とは上手くいってるのか? 」
「仲良くやってるよ。 最近は今日の獣医師会の準備で、余り構ってあげてないから、今日はゆっくりイチャイチャするよ」
「ならお前も、打ち上げ参加しなきゃいいだろ? 」
「2人とも参加しないのは、教授の手前よくないだろ? お前みたいな性格だと、みんな気にしないが、俺みたいなのは、参加しないと色々言われんだよ」
「グッ…悪かった」
自分の社交性のなさで、倉木に迷惑かけてるのは知ってる斉川は、謝った。
「いいって、気にするな。俺も早めに切り上げる予定だし」
「さっ、始まるぞ! 」
待合室にいた人達が、会場へ順番に入っていく。
「ハァ、行くか…」
斉川は重い腰をあげ、渋々と倉木の後をついていった。
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120分後、会場からゾロゾロと人が出て来る。
その中にはようやく終えて、ぐったりしている斉川と倉木がいた。
「あ~やっと終わった! 意外に好評で良かったな! 」
う~ん、と伸びをしながら倉木が言った。
人前で話すのが嫌いな斉川は疲れきっていた。
「もう、二度と発表なんかしないからな! 」
「それは、教授に言えよ! お前の腕を評価してるから、手術例をみんなに言って欲しかったんだろ? 」
「評価される為に、やってる訳じゃない」
ブツブツ文句を言ってると、
「2人ともお疲れさん! 」
教授が話しかけてきた。
「やっぱり、斉川君の手術例はいいね! 若い獣医達のモチベーションが上がるよ! 今度は学生達にも話してくれ」
「勘弁して下さい。俺はそうゆうの得意じゃないんで」
教授にも文句を言う斉川。
「はは、今回は悪かったよ! 引き受けてくれて助かったよ。 これから打ち上げだが、参加してくれよ! 」
「俺は帰ります」
「相変わらず、付き合い悪いね。そんなんじゃ恋人できないぞ? 」
「教授。それが、和希今可愛い恋人と同棲中なんですよ! 」
斉川の代わりに倉木が、話した。
「えっ? 君恋人いるのかい? しかも同棲中? 人と一緒に住めるのか? 犬とかしゃなくて? 」
倉木の発言に心底驚いた顔をした。
ゲラゲラ笑いながら、
「教授、言い過ぎですよ。本当に可愛い恋人ですよ! 俺も会ってますし」
「本当かい? 倉木君が言うならそうなんだろうけど、あの斉川君に恋人ね~」
マジマジと斉川の顔を見ながら、
「確かに少し、柔らかい顔になったかな? 幸せなんだね? 」
「はい、幸せなんで、俺は帰ります。また大学に挨拶に行きます。では」
そう言って、スタスタ会場を後にした。
「ハァー、恋は人を変えるのかね? あの人嫌い、妹大好きな斉川君が、恋人と同棲中とは…今日の飲み会のネタになったね」
「本当、和希変わりましたよ? その話は俺がゆっくりしてあげますよ! さっ、打ち上げ行きましょ! 」
倉木は教授を促し、打ち上げ会場に向かう。
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「雪、ただいま」
「あっ、おかえりなさい! 」
「んっ? 風呂入ってたのか? 」
斉川がそう言ったのには、訳があった。
何故か、斉川を出迎えた雪は、火照った顔に斉川のバスローブを着ていたからだ。
「えーっと…違くて…和希さんの誕生日プレゼントです…」
そう言って雪はバスローブを脱いだ。
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