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第6話

 立花慧(たちばなけい)。同じクラスで学級委員長をやっている、眉目秀麗で品行方正な生徒。  俺にも分け隔てなく優しく、前世でどれだけの徳を積んだらこんな風に生まれ育つんだ、とすら思っている聖人だ。  それも、代々医者の家系で、彼も父やまだ現役の祖父の背中を追って猛勉強していることは、学校中で知れ渡っている。だから俺が医学に興味があると思ったのだろう。  慧は無垢な微笑みを向けてくれる。まるで中世の奴隷のようなみすぼらしい俺にとっては、見惚れてしまうほど神々しい。 「長所ならもう充分にあるだろう、僕と雑談してくれていることとか。僕は……実はプライベートなことを話せる相手があまり居ないんだ。だから、九重の興味関心が僕と同じと知れて、こうして話し相手になってくれているのが嬉しい」 「う、嬉しっ……!? あー……うん。そ、それなら良かったけど……でも……あんなに人気者の橘花さんなのに……」 「人気者……か。僕がやっているのは、誰にでも対等なのではなく、八方美人なだけだ。ただ嫌われたくないんだよ」  誰が慧を嫌うものか。好きだ。大好きだ。愛してる。  これが恋愛感情というものなら、そう、もう入学式で一目見た瞬間から、俺にとって慧という存在は紛れもない「天使」になった。

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