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第8話
「あ、あの……さっきの本、実は……催眠療法っていうのも書いてあって……橘花さんてずっと誰かの為に頑張ってて、疲れもあるだろうし……何か役に立てるかも〜? ……なんて」
「催眠……? なるほど。でも素人ができるものなのか?」
「そ、それを実践してみたいんだ。お願い! 橘花さん! この通りだから!」
慧はそもそも優しいが故に押しに弱いところがある。
こうして他人に直球でお願いされると、そう易々とは断り切れない。
「……わかった、少しだけな。もしもかかってもすぐ解いてくれよ?」
「う、うん! ありがとう!」
飛び上がりそうなほど喜びたいのを抑え、慧を自分の席に座らせた。
「じゃあ、橘花さん、まずはお互い自己紹介でも……」
「ぷっ、九重……その言い方じゃ見合いみたいだ。同級生なんだぞ? お互い多少は知ってるだろう。それに、医学的な知見はあっても、ストレス発散だとかリラックスだとかの方法を試してもあまり効いた試しがないのだが……」
「え、あ……!? そうなんだ……?」
そこからだとは思わなかったが……日常的に無理をして張り詰めた雰囲気の慧なら仕方ない。
というか、こうして慧と二人きりで話すこと自体があまりの奇跡すぎて、こっちがあわあわしてしまう。
慧は一見、いつも落ち着いていて、学校一大人びていて、真面目で穏やかな性格に見える。
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